電磁波を使った軍事活動を指す「電子戦」。敵が発する電磁波を収集・解析して動きを把握し、電磁波を発射して通信などを妨害する-という攻防をたどる。
海上自衛隊岩国航空基地(山口県岩国市)を拠点とする情報収集部隊「第81航空隊」(組織改編後は「電子戦支援室」)で33年間、データ解析などに当たってきた。「データ収集機のある岩国にしかない部隊。オンリーワンの経験をさせてもらった」と振り返る。
岩国市で生まれ育ち、身近にあった海自の航空機に興味を持ち、地元の県立高校卒業後に入隊した。当初は航空機の電子機器整備を担当。第81航空隊に配属されたのは入隊10年を過ぎた昭和62年だった。
編成から間もなく手探り状態だったが、地道に研究を重ねて解析手法の標準化に貢献。平成3年に新データ収集機「EP-3」が導入されると、機能に合わせた解析要領の確立に寄与した。5年には希望して航空士(電波収集員)となり、航空機に乗りながらデータ収集する任務にも就いた。
「先入観を持たず、常に好奇心を持って取り組む」が信条。新情報の探知や解析に成功したときの達成感は何ものにも替え難い。
定年退官後も再任用され、後輩の指導にも力を注いできた。65歳での再退官の時期が迫り、「持っているものを全部置いていくつもりで任務に当たりたい」。2人の子育てを終え、妻のさとみさん(64)との旅行が楽しみという。(山口淳也)