北ミサイル発射直後に官邸を空けた松野官房長官 危機管理に不安

記者会見する松野官房長官=29日午前、首相官邸
記者会見する松野官房長官=29日午前、首相官邸

首相官邸の危機管理は大丈夫なのか―。そう不安を感じざるを得ないことが起きた。

28日夕、北朝鮮から弾道ミサイルの可能性があるものが発射されたとの一報が飛び込んできた。この時、松野博一官房長官は首相官邸を出る間際で、報道各社の囲み取材に応じていた。まだミサイルの情報は入っておらず、記者の一人から聞かされた。

当然、その後の予定をキャンセルして執務室に戻り、情報収集や対応の指揮などに当たるかと思われた。しかし、松野氏はそのまま官邸を後にしてしまった。

岸田文雄首相はこの時、東京・元赤坂の迎賓館で安倍晋三元首相の国葬に参列した各国首脳らと会談していた。松野氏が官邸を出たことで〝2トップ〟が同時に不在となった。首相が官邸に戻ったのは松野氏が出てから約40分後。弾道ミサイルが着弾したのが日本の排他的経済水域(EEZ)だったこともあり、松野氏はこの日、官邸に戻らなかった。ミサイルに関する記者会見は井野俊郎防衛副大臣が防衛省で行った。

官房長官は危機管理の「総合調整」を担う政府の司令塔だ。首相不在中となれば、その責任は一層重い。弾道ミサイルの情報や被害状況が確定していない段階で官邸を空けた行動は適切だったのか。

29日の記者会見でこの点を問われた松野氏は「事態が緊迫する可能性などを総合的に判断した」として問題はなかったとの認識を示した。その上で「発射直後に電話などで秘書官から報告を受け、私からはさらなる情報収集と分析を指示した。その後も随時報告を受けるとともに、いつでも官邸で必要な対応ができるよう万全の態勢で臨んでいた」と説明した。官邸を出て向かった先については明言を避けた。

菅義偉前首相は安倍政権下の官房長官時代、ミサイル発射があれば官邸に駆け付け、繰り返し記者会見を開いて必要な情報を発信した。災害などへの対応で官邸のエントランスホールを猛ダッシュで駆け抜ける姿が話題になったこともある。迅速な初動をあえて見せることで、国民を安心させる効果も狙ったとされる。ミサイル発射直後に官邸を空けた松野氏とは対照的に映る。

松野氏は自身が目立つことを嫌い、黒子に徹する仕事ぶりで知られる。何事にも抜かりのない堅実な手腕は、永田町でも評価が高い。ただ、官房長官は「政権の要」ともいわれる重職で、国民からの注目度も高い。危機管理には一層の緊張感が求められる。(石鍋圭)

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