水素エンジンスポーツカーの特別授業 甲府の小学校

校庭を走行する水素エンジンスポーツカー「GRヤリスH2」=16日、甲府市の山梨大付属小(平尾孝撮影)
校庭を走行する水素エンジンスポーツカー「GRヤリスH2」=16日、甲府市の山梨大付属小(平尾孝撮影)

甲府市の小学校で、プロレーサーが運転する水素燃料のスポーツカーに児童を乗せ、校庭をドリフト走行する体験授業が行われた。山梨県は脱炭素社会実現に向け、製造時点でも二酸化炭素(CO2)を出さない「グリーン水素」関連事業の強化に取り組んでいる。そこで教育現場でも、グリーン水素をテーマにした国内初の授業が行われることになったのだ。

水しか出さない

「体がもっていかれて、すごい迫力だった」「こんなに速く走るのに、水しか出さないなんてすごい」

16日、甲府市の山梨大付属小学校の校庭をドリフトしながら走行する水素エンジンのスポーツカー「GRヤリスH2」の助手席に乗車した児童は興奮しながらそう感想を話した。

この車は、8月にベルギーで開催された世界ラリー選手権(WRC)で、ドライバー名「モリゾウ」こと、トヨタ自動車の豊田章男社長がコースをデモ走行し、話題となった車両だ。近くレース仕様車に改良される。

電気分解を学ぶ

特別授業は、同小5年生100人を対象に、トヨタと販売会社など県内トヨタ系列7社、三井住友海上火災が共同で実施した。

5年生の社会科には自動車産業がカリキュラムに組み込まれている。山梨大は水素関連産業の研究開発を行っていて、その付属小の児童に〝山梨の水素〟と絡めて自動車産業の将来を学んでもらう狙いだ。

デモ走行の前に、まず体育館で実験と座学。重曹を溶かした水に電極となる鉛筆を2本入れ、手回しの発電機を回し電気を流すと、水素と酸素に分解される水の電気分解を体験した。さらに、トヨタの耐久レース水素エンジン車の燃料に、甲府市米倉(こめくら)山の施設で太陽光を使って水を電気分解して作ったグリーン水素が使われていることが披露され、子供たちは目を輝かせた。

水素エンジンスポーツカー「GRヤリスH2」を体験し降車した直後の児童=16日、甲府市の山梨大付属小(平尾孝撮影)
水素エンジンスポーツカー「GRヤリスH2」を体験し降車した直後の児童=16日、甲府市の山梨大付属小(平尾孝撮影)

水素エンジンの走り

その後、プロレーサーの佐々木雅弘選手による校庭でのGRヤリスH2のデモ走行。くじ引きで選ばれた児童9人が、交代で助手席に乗り、水素エンジンスポーツカーの走りを体験した。車から降りた児童は「どうだった」と見学した同級生から根掘り葉掘り質問攻めに合っていた。

耐久レースに参戦している水素エンジンのレースカーも展示。水素タンクが後部座席のスペースに設置されていることなど構造を学んでいた。

デモ走行はなかったが、水素エンジンの耐久レースカーも展示された=16日、甲府市(平尾孝撮影)
デモ走行はなかったが、水素エンジンの耐久レースカーも展示された=16日、甲府市(平尾孝撮影)

新しい選択肢

トヨタ関係者によると、水素エンジン車をテーマにした特別授業は、愛知県内で同社などが実施している。ただ「水素エンジン車を持ち込み、デモ走行したり、児童を乗せたりというのは前例がなく、国内では初めて」という。

トヨタとしては、脱炭素社会に向けガソリンエンジンが悪者扱いされ電動化が進もうとしている中で「CO2を排出しない水素エンジンは脱炭素と同時に走る喜びも味わえ、新しい選択肢になる」ことへの理解を広める狙いだ。

また、県内の系列会社が協力したことで、グリーン水素の分野で山梨が国内の先導役になっていることを強調。至る所に〝山梨の水素〟という表現を使う。「モモやブドウと並んで〝水素〟を山梨の名産に」との思いだ。

特別授業終了後に多くの児童にサインを求められるプロレーサーの佐々木雅弘選手=16日、甲府市(平尾孝撮影)
特別授業終了後に多くの児童にサインを求められるプロレーサーの佐々木雅弘選手=16日、甲府市(平尾孝撮影)

山梨トヨペット(甲府市)の高野孫左ヱ門社長は「子供たちが喜々として水素社会をイメージしていたのと同時に、レース車やプロの運転を体験し、クルマや運転の楽しさを感じてくれた」と特別授業の手応えを感じていた。(平尾孝)

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