主張

デジタル給与 懸念払拭し利便性高めよ

企業が賃金の一部をキャッシュレス決済口座などに振り込む「デジタル給与払い」が来年春にも認められる見通しとなった。厚生労働省の審議会が制度案を大筋で了承したのを受け、同省は省令を改正して解禁する。

新たに振込先となるのはスマートフォン決済向けの「ペイペイ」や「楽天ペイ」などのキャッシュレス口座だ。一定条件を満たす事業者を賃金の支払先として認める。

給与支払いを受ける利用者は自分で現金を口座にチャージしなくても使えるようになる。急拡大するスマホ決済の利便性をさらに高めるよう期待したい。

制度設計においては、利用者保護の仕組みを整えることが当然の前提である。制度案では、企業が労働組合などと協定を結び、労働者が同意した場合のみ利用できるようにした。口座維持などに懸念が生じることがないよう万全の手立てを講じてもらいたい。

労働基準法では、労働者に支払う賃金は現金で支払うように定められており、例外として銀行口座などへの振り込みが認められている。今回の改正はこれにデジタル口座を加え、キャッシュレス決済に使えるようにするものだ。

口座振り込みから電子マネーに切り替えることで、ATM利用料を削減できるメリットなどが想定される。銀行口座を開設しにくい外国人の利用も見込まれる。

口座残高の上限は100万円とし、それ以上の振り込みは認めない。デジタル給与払いを認めるかどうかの本人同意については、明確な意思確認を求めたい。新たな制度だけに利用者に対する丁寧な説明が欠かせない。

デジタル給与払いの口座を運用する資金移動業者は現在、85社が登録している。この中から一定の条件を満たした事業者を厚労相が指定する。指定に際して厳格な条件を課すだけでなく、事業者に対するその後の監督も必要だ。

事業者が経営破綻した際、口座残高の保証制度なども求められよう。事業者が供託金を出す案なども浮上しているが、利用者を拡大するためにも保証制度を早期に整備しなければならない。

スマホなどによるキャッシュレス決済は若者層を中心に広がっており、ポイント付与などで利用者の獲得競争も激化している。デジタル給与払いの解禁で、さらなるサービス競争を促したい。

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