コスパ最強のアクセス道 鳥取県に無料「高速道」が多い秘密

鳥取市内を走る山陰道。鳥取県内の高速道路は暫定2車線(片側1車線)区間が多い
鳥取市内を走る山陰道。鳥取県内の高速道路は暫定2車線(片側1車線)区間が多い

鳥取県内初の高速道路「米子自動車道」(米子道)が12月、全線開通30年を迎える。平成のはじめごろから「県庁所在市とつながる高速道路がない」を逆手にとって高速道の必要性を訴え続けた鳥取県。米子道を皮切りに自動車専用道路(自専道)網が充実。現在は関西圏とつながる「鳥取自動車道」(鳥取道)が全通、県の東西を貫く「山陰道」も8割以上開通している。自専道整備により拠点間の時間距離が大幅短縮するとともに、通行料無料(米子道除く)が観光や経済振興などで大きなアピールポイントとなっている。

高速道の総距離30年で6倍

「これまでは中国自動車道(中国道)や米子道を使って松江まで帰省していたが、初めて鳥取道、山陰道を経由して帰ってみた。時間は少しかかるものの、通行料の安さは魅力」

こう話すのは神戸市在住の会社役員の男性。最短距離ではない鳥取県内経由をあえて選んだのは、高速料金が安くつくと聞いたからだったという。

中国道の佐用ジャンクション(JTC、兵庫県)から鳥取インターチェンジ(IC)までの鳥取道、それに接続する山陰道で米子西ICまで走ったが、この区間はすべて通行料無料。神戸から中国道、米子道を経由すれば5千円程度かかるが、鳥取県内の無料区間を通れば半分で済む。

鳥取県内の山陰道や鳥取道が無料なのは、国が費用負担する「直轄方式」や、国と県が費用負担する「新直轄方式」で道路が建設されたため。高速道路会社が運営・管理し、通行料が有料の高速道とは異なる。

両道路の開通により県内外を結ぶアクセスは飛躍的に向上した。鳥取道ができる前、3時間40分程度かかっていた大阪-鳥取間の所要時間が2時間半に、鳥取-米子間は山陰道整備前の2時間半が、現在は約1時間半と、ともに約1時間短縮された。県内の自専道の総距離は現在約162キロで、米子道がまだ全通していなかった30年前の約25キロと比べると6倍以上に延伸し、利便性が飛躍的に向上した。

県内山陰道4年後に全通

高速道は、日本経済を牽引(けんいん)し人口規模も大きい首都圏や関西圏などから順次建設された。県内では、米子道の一部となる江府(こうふ)-米子IC間が平成元年12月に開通(自専道としては昭和60年に現在の山陰道の米子南-米子西間が開通)し、昭和38年の名神高速一部区間の供用から四半世紀以上遅れて高速道時代の幕が開いた。

鳥取道整備では新直轄方式が導入され、平成25年に佐用JTC-鳥取ICがすべてつながり、県庁がある鳥取市に乗り入れる悲願の高速道が完成した。

また、山陰道は国道9号のバイパスとして事業化され、米子道路など5つの道路が順次開通。県内延長88キロのうち残す区間は北条道路の13・5キロで、それも令和8年度には完成予定だ。

「無料区間」と告げる山陰道の案内標識。鳥取県内の山陰道、鳥取道は全区間無料だ=鳥取市
「無料区間」と告げる山陰道の案内標識。鳥取県内の山陰道、鳥取道は全区間無料だ=鳥取市

近くなった鳥取

「たとえば日本海で水揚げされた魚介類をより新鮮なまま大阪などの大市場に運べれば、鳥取県の漁業者にとってメリット大だ」

県内の高速道充実の必要性について、鳥取県高速道路推進室の井上直樹室長は説明する。県内工業団地への企業誘致でも製品の速達性確保は進出企業にとって大きな魅力。加えて、高速道が無料で通行できるとなれば、大きなアドバンテージとなる。

観光面では、鳥取道の全線開通、令和元年の山陰道の鳥取西道路開通などの節目で鳥取県などは、関西方面に「近くなった鳥取」「無料で周遊できる鳥取」をアピールした。

一方、県内の高速道は暫定2車線(片側1車線)区間が多く、低速車がいると追い越しできなかったり、雪が降れば車線の余裕がないためすぐに全面通行止めになったり、対向車線から飛び出す事故の危険性があるなどの弱点もある。これは、片側2車線の完全な形での高速道整備を追求するよりも、一刻も早い開通を優先させたためだった。

「全国と比べて高速道整備が進んでいなかったが、結果的に無料で高速を利用できるのは逆によかった」。山陰道を利用して県中部から鳥取市まで約30キロをマイカー通勤する団体職員の男性は語る。

県内では、山陰道に接続し日本海に沿って京都府宮津市までつながる地域高規格道路「山陰近畿自動車道」や、中国山地を越えて岡山県真庭市までの「北条湯原道路」、広島県三次(みよし)市までつながる県西部の「江府三次道路」など自専道を含む道路整備が進む。また、山陰道などの暫定2車線の4車線化も順次進めており、高速道の充実はなお進行中だ。(松田則章)

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