安倍晋三元首相の国葬(国葬儀)が営まれた27日、埼玉県内でも献花台で手を合わせる人がみられたほか、埼玉県は庁舎に半旗を掲揚するなど、弔意を表す行動が相次いだ。一方、国葬に反対する市民グループは抗議活動を行い、賛否が割れる状況が改めて浮き彫りになった。
献花台、半旗で弔意
「安倍氏は海外で日本の存在感を高めた。非常に応援していた。手を合わせて『ありがとうございました』と声をかけた」
さいたま市浦和区の自民党県連前に設置された献花台に、同県深谷市から27日、駆けつけた党員の60代男性は、神妙な面持ちで、こう話した。献花台には弔意を表そうと訪れる人が引きも切らなかった。
県庁(同区)では、本庁舎の東玄関前や第2庁舎の北玄関など計7カ所に半旗と弔旗が掲げられた。県の担当者は「行政機関として国のトップに弔意を示す」と説明した。
このほか、さいたま市は本庁舎(同区)と区役所の計10カ所で掲げた。県警は全39署などに半旗掲揚を促す通知を出した。
国葬に参列した大野元裕知事は「厳かな式であり、心からの敬意を表するとともに改めてご冥福をお祈りした」、さいたま市の清水勇人市長は「首相在任中、本市政の発展にご尽力をいただいた」などとするコメントをそれぞれ出した。
賛否分かれる実態
国葬をめぐっては、県民の間でも賛否が分かれる形となった。
「感謝の気持ちを表すために国葬は賛成」と話すのは、同市浦和区の20代の女性会社員だ。「歴代首相の中で最も長い間、日本のために働いてくれた」とねぎらった。
また同市緑区の無職の60代男性は経済政策「アベノミクス」に言及し、「日本経済の回復に力を尽くしてくれた。若くして亡くなり残念だ」と悔やんだ。
一方で、同市大宮区の20代の女性会社員は「安倍政権は評価している。銃撃されて亡くなったのはショックだ」としつつも、「国葬にかかる費用が高すぎる」と指摘した。
同市緑区の60代の自営業男性は「国会で審議することなく、国葬の実施を決めたのは問題だ」とし、学校法人「森友学園」への国有地売却をめぐる問題などに触れ「賛成できない」と力を込めた。
抗議行動も
国葬に反対する埼玉県の市民グループは27日朝、県庁前に集まり、半旗掲揚や大野元裕知事が参列することに対し、抗議活動を行った。参加者は「安倍『国葬』を認めない」と大きく書いた横断幕を手に「民意を聞いて」などと声を上げた。
抗議行動は午前7時半ごろスタート。出勤する県職員や、学生らにビラを配りながら「国葬おかしい」などと訴えた。午前8時過ぎ、県庁に半旗が掲げられると「降ろせ」とシュプレヒコールを繰り返した。
グループの共同代表を務める武内暁さん(74)は「国民の声を無視して実施する姿勢は、歴史や世界から見ても恥ずかしい。国葬が終わっても問題を追及する」と語気を強めた。