「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記

17年連続V逸のトラ…〝緩い〟空気を一掃するリーダー&組織改革が必要だ

春季キャンプで「予祝」として行われた矢野監督の胴上げ(撮影・松永渉平)
胴上げされる阪神の矢野監督

阪神は球団内の緩い空気を一掃しないと、来季もダメですよ! セ・リーグは25日にヤクルトがDeNA戦(神宮)にサヨナラ勝ちし、2年連続9度目のリーグ優勝を飾りました。矢野燿大監督(53)が退路を断って臨んだ阪神は今季もV逸。2005年のリーグ優勝以来、17年連続の敗退です。投打ともに戦力が整ってきている中で、なぜ一度も優勝争いにすら加われないのか。痛感するのは球団内に漂う甘さです。なぜ春季キャンプ直前に監督が退任表明? なぜ予祝(よしゅく)とやらで胴上げ? なぜダメ外国人が次々とやってくる? それでも観客動員は好調で球団経営は順風満帆…だから反省もない⁉ 緩みを正さないと17年連続が20年に…20年が25年になります。

悪くない戦力バランス

今年も悔しい、むなしい気持ちで他球団監督の胴上げを見てしまいました。優勝へのマジックナンバーを「2」としていたヤクルトが25日、マジック対象チームのDeNA戦(神宮)で九回裏サヨナラ勝ち(1対0)。2年連続9度目のリーグ優勝を果たした高津臣吾監督(53)が神宮の夜空に7度舞いました。

「みんなをここまで信用して、信頼してやってきました。ファンの皆さんも一緒にチームスアローズであげた1勝が、大きな大きな1勝だと思っています」

監督就任3年目で、球団では1992、93年以来のリーグ連覇を達成した高津監督は万感の思いで声を絞り出していました。勝者の姿は神々しく、堂々としていて、達成感に満ちあふれています。高津監督、村上や山田哲などヤクルトの戦士たちの姿には勝った者だけが得られる充実感が漂っていました。

そして、阪神です。140試合を終了した時点で66勝71敗3分けの4位。巨人と広島との3位争いは10月2日の今季最終戦(ヤクルト戦=甲子園球場)までもつれ込みそうな空気です。もはや目線を下げて、3位でのクライマックスシリーズ・ファーストステージ進出を願うしかありません。残り3試合はすべてヤクルト戦。優勝を決めた直後の相手がどんな戦力で試合に臨むのか。場合によっては有利な状況が生まれるかもしれませんが、3連勝したとしてもシーズンの負け越しは決まっています。

もう何度も書いていますが、もう一度、阪神の今季成績を見てみましょう。チーム防御率2・70、チーム失点423はリーグトップ。盗塁106もリーグトップ。ダントツです。チーム打率2割4分4厘はリーグワースト。チーム得点480はリーグ4位で、本塁打82はリーグ5位。投手陣は安定し、機動力も使えたが打線が弱い、長打力が不足している…となります。

しかし、チーム得点480に対して失点は423。実に57点もプラスです。優勝したヤクルトが596得点で550失点ですから、その差は46点。こうした数字を見ると、打てなかったけど戦力的なバランスは決して悪くはなかった…といえなくもない。DeNAや巨人は得点と失点ではそれぞれ失点が大きく上回っています。

敗因は空気の〝緩さ〟

では、どうしてヤクルトは美酒で阪神は地団駄(じだんだ)なのか…。チームをずっと見ていると戦力的な問題以上に球団や現場を取り巻く空気の〝緩さ〟に問題意識を持ってしまいます。

例えば春季キャンプ直前の1月31日の全体ミーティングで「俺の中で今シーズン限りで退任しようと思っている」と今季限りでの退任表明を行った矢野監督の言動。阪神OBのみならず球界の重鎮からも批判が飛び交いました。今季のチームスローガン「イチにカケル!」の意味がラスト1年に懸けるという意味か…と決意のほどは分かりましたが、なぜこの時期に…という??は球界全体に漂いました。チームが「さあ、これから勝負や」となる瞬間にリーダーが「今年限りで辞めまっさ」では拍子抜けもいいところです。

さらに春季キャンプ中には1日キャプテンを務めた糸井と西勇輝の提案による「予祝」とやらで矢野監督の胴上げを行いました。9・25に本物の胴上げを行ったヤクルト・高津監督の姿は神々しかったですが、沖縄・宜野座のドーム内で行った「予祝胴上げ」にはなんら感動もなく、周囲はキョトンです。これも球界内では嘲笑の対象となり、さまざまな声が漏れてきました。

いずれも球団フロントは事前に行動を承知していたはずです。では、どうして止めなかったのか。6月15日に開催された阪急阪神ホールディングスの定時株主総会では株主からキツイ質問が飛んでいます。

「あの阪神の矢野。なにがあの辞めるというたんや…と。キャンプイン前日、いわばお正月です。『辞めますわ』。あんな自分勝手な人はおらへん。ほんで胴上げしよった。予祝や、アレなんやそれ。そういう社会的な常識ない監督を、誰か言うたんかい(球団)役員!」

谷本修取締役オーナー代行(57)=阪神電鉄取締役スポーツ・エンタテインメント事業本部長=が経緯を説明し、株主の怒りを収めようとしましたが、聞いていた株主の耳に言葉がスーッと入ってきたかどうか…。社会的に常識のない行動をとった監督?にもですが、それをいさめることができない球団の姿勢にも?マークは消えないままでした。

外国人補強は大失敗の連続

さらに戦力補強の面でも〝緩い空気〟は感じ取られます。シーズン途中にアデルリン・ロドリゲス内野手(30)=前パドレス3A=を獲得しました。打線の強化策ではありますが、一塁に大山、三塁に佐藤輝を起用し、定着させるのか…と思った直後の外国人選手獲得でした。その後、玉突き的に佐藤輝は二塁の守備練習に入り、実際に起用もされました。しかし、オリックス在籍時(2020年)に結果が出ず、1年で解雇された外国人をなぜ、シーズン途中に獲得するのか。 案の定、ロドリゲスは変化球が全く打てず、すぐに2軍落ち。ロドリゲスだけではなく、今季はマルテも故障続きで成績不振。昨季から2年契約、年俸総額5億2千万円(推定)のロハス・ジュニアも全くダメ。投手陣でもウィルカーソンや抑えを予定していたケラーは期待外れ。昨季から2年契約、年俸総額4億円(推定)のアルカンタラも期待外れで、同じく昨季から2年契約、年俸総額4億円(推定)のチェンも左肩の故障でシーズン途中に帰国です。外国人選手の補強は大失敗の連続です。それでも球団本部・国際スカウトに対しては批判の声が聞こえてきません。

戦力構想の見通しの甘さや、補強失敗の改善策を組織として練っている様子がないのはどうしたことなのでしょうか。

こうしたさまざまな状況を見ていると、やはりチームや球団の空気をピリッとさせる組織改革や、強烈なリーダーシップのある指導者が現場に必要です。ダメなものをダメと言える組織にしなければなりません。ダメな部分は人心を一新し、空気を換えるべきです。そうしたチーム内の緊張感が生まれてこなければ、戦力を生かし、頂点でゴールに飛び込めるチームにはならないでしょう。逆に言うならば、緊張感のある阪神タイガースに変身すれば、来季は大いに期待できると思いますね。

【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。

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