「産後パパ育休」10月から 企業の意識改革不可欠

男性育休取得中のNEC社員、及川剛さんと長女のうみちゃん=NEC提供
男性育休取得中のNEC社員、及川剛さんと長女のうみちゃん=NEC提供

妻の産休期間中に夫が取得できる男性版産休の「産後パパ育休」(出生時育児休業)制度が10月1日から始まる。子供の誕生から8週間以内に育児休業を計4週まで2回に分けて取れるなど、柔軟に利用できるのが特徴だ。今年4月には企業が育休取得を働きかけることが義務化され風向きが変わりつつあるものの、取得をためらう男性は依然として多い。浸透には企業の意識を変えることが不可欠だ。(飯嶋彩希)

「周りが積極的に支えてくれたので、取得に不安はなかった」。NECの及川剛さん(33)は第一子である長女、うみちゃんの誕生に合わせて、今年1月から約3カ月間育休を取得した。妻、麻由香(あゆか)さんも育休中だ。及川さんは当初、育休を取得する発想はなく、上司に促されて初めて思い至ったという。

出産後の麻由香さんは、少し体を動かすだけでも痛がった。3時間おきに泣き出す娘をあやすため、満足に眠れない日が続く。麻由香さんが夜中に涙を流す姿に「想像していたよりも育児は大変。自分が支えなければ」と感じた。育休を取ってよかったと振り返る。

新制度は、令和3年6月に成立した改正育児・介護休業法の施行を受けたもの。通常の育休は原則1カ月前までに勤務先へ申請する必要があるが、産後パパ育休は2週間前までで構わない。労使が合意すれば休業中も限定的に働くことが認められ、一時的な出社やテレワークができる。

育児休業給付金が通常の育休と同様に支給され、社会保険料免除と合わせると手取り収入の約8割が得られる。心身とも不安定になる産後の妻のケアにつながるほか、厚生労働省の担当者は「男性が先の長い子育てへの関わり方や働き方を見直すきっかけになるはず」としている。

育休は現在、取得できるのが原則、子供が1歳になるまで夫婦それぞれ1回ずつだが、10月からは2回に分割して取れるようになる。夫婦が交互に取ったり、妻の復職時に夫が再取得してサポートしたりと、家庭の状況に応じた利用が可能となる。

取得が企業で進まない理由には、前例の乏しさもある。取得者は昇進への影響や周囲の負担が気になり、企業側は人手不足を懸念する。取得しやすい雰囲気づくりや、仕事を分担する仕組みづくりが重要になる。

積水ハウスは男性育休の取得率100%を達成。同社が14日に行ったイベントで仲井嘉浩社長は「育児を通して社会を知る。会社の組織運営にもつながるが、まず社員が幸せになることだ。会社で権限を持つ人が進める必要がある」と発言。同じく登壇した人事院の川本裕子総裁は「育休の1年間と留学の1年間は同じ価値がある」と話した。

男性が育休を取得すると、働きやすさを感じ長く会社に勤めたいという意欲にもつながる。女性社員も安心して産休・育休が取得でき、働きやすい企業として結果的に人手の確保に結び付く利点がある。

産後パパ育休についてリクルートワークス研究所の奥本英宏所長は「労使協定があれば勤務可能なのが、男性育休普及の一番の起爆剤になる」と指摘。多様な働き方やデジタル化が追い付いていない企業は総じて男性育休への対応も遅れているという。取得の普及には、「トップの強いメッセージがなければ進まない。仕事の見える化など環境整備が必要」としている。

育児休業制度 労働者が子供の養育のために仕事を休む制度。期間は原則、子供が1歳になるまでだが、保育所が見つからないなどの事情があれば2歳まで延長できる。休業中は最初の半年が賃金の67%、以降は50%が雇用保険から支給される。今年4月から改正育児・介護休業法が段階的に施行。事業主に対し、従業員への取得働きかけが義務付けられた。

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