浪速風

君主の尊厳を求める習近平氏

英国の裁判官だったロバート・E・ボール氏の著書「王位・聖人・最高道徳」(北川治男監訳)によると、英国王室は武力で統治する「戦士王」に源を発する。ただ議会の発達とともに立憲君主として「国民の本質の精神的体現者」の側面が強まり、王族のさらに古い歴史段階である「祭祀(さいし)王」の観念に近づいているという

▶聖なる王職のイメージは国民的意識に深くしみ込み、過去との絆になる。こうした伝統がもたらすのは秩序と安定だ。君主制を切り捨てることは「国民の潜在意識の上に深い傷をつける」とボール氏は1983年に警鐘を鳴らした

▶中国当局者から、国家元首である習近平国家主席の尊厳を傷つける記事は控えるべきだと苦情を伝えられたことがある。習氏は共和制の国のリーダーだが君主の尊厳性も手に入れたいようだ。皇帝政治の伝統を切り捨てた現代中国は国民統合の象徴を欠いており、無秩序や混乱への危機感が根底にあるのかもしれない。

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