国産木材建築に脚光、林業改善の好機 進む高齢化・死傷者率突出

東京海上ホールディングスなどの新本社ビルのイメージ(Renzo Piano Building Workshop提供)
東京海上ホールディングスなどの新本社ビルのイメージ(Renzo Piano Building Workshop提供)

環境意識の高まりや技術の進歩で木造建築が注目を集める中、国産材への期待が高まっている。輸入材に比べて調達しやすい点が見直され、木造高層ビルなどへの採用も相次ぐ。国内林業振興の観点も大きい。ただ、国内の現場は高齢化が進み、担い手不足が深刻さを増す。危険が伴う職場環境だけに敬遠されがちだ。国産材への関心が高まっているのを好機ととらえ、労働環境改善に向けた取り組みが急がれる。

木材は、森林が吸収した二酸化炭素(CO2)を貯蔵しているとみなされ、脱炭素に貢献していると考えられている。SDGs(持続可能な開発目標)の一環として、企業は木造建築に着目。耐火性や強度の改善といった技術の進歩も大きい。同時に国内林業の立て直しに貢献しようと、国産材の活用に前向きだ。

東京海上ホールディングスと東京海上日動火災保険は8月、両社が本社を置いていた東京・丸の内のビルを、一部に木造を取り入れて建て替えることを公表した。新しいビルは高さ約100メートルで、地上20階、地下3階建て。柱や床に国産材を使い、木の使用量は世界最大規模になるという。令和6年12月に着工する。  大林組は今年3月に横浜市に地上11階の木造ビルを完成。7年には東京・日本橋に三井不動産がグループで保有する森林の木材を活用して地上17階の木造ビルを完成させる予定だ。

純木造の新社屋の完成予想図(アキュラホーム提供)
純木造の新社屋の完成予想図(アキュラホーム提供)

高層化に必要な高度な建築技術を採用せずに従来技術で、国産材を使い木造ビルを建設する動きもある。住宅メーカーのアキュラホーム(東京都新宿区)は、6年度に本社をさいたま市西区に移転する。新本社は純木造の8階建て。地元の工務店と住宅建築の伝統工法を用いて建てる。

同社の担当者は「大工でも建てられる木造ビルを目指している。(新本社が手本となって広まれば)新しい収入源になる」と話す。

モックの国産材を使った大型パネル工場(千葉市稲毛区)
モックの国産材を使った大型パネル工場(千葉市稲毛区)

住宅用では、建築用木材を扱うモック(埼玉県八潮市)が8月、千葉市で国産材に特化した木造大型パネルを製造する大型工場を稼働させた。窓枠をはめ込むなど建築物の壁面として使えるパネルを生産する。

平屋や2階建ての住宅の約9割が木造で、修繕などで国産材の活用を提案する。首都圏向けに年間約60棟分のパネル生産を目指す。

国産材が注目されるのは低価格が魅力だった輸入材の高騰だ。新型コロナウイルス感染拡大に伴い、海外で郊外に住宅を建てる需要が高まり、木材価格が急騰。さらにウクライナ侵攻に対するロシアへの経済制裁でロシア産木材の輸入が激減した。歴史的な円安水準も拍車を掛ける。輸入材の調達難が国産材を浮かび上がらせた。

日本は国土面積の約7割を森林が占め、このうち人工林の多くは収穫適齢期を迎えているとされる。需要に応える量はあるとみられるが、供給側に課題がある。

林野庁によると、最新データの平成27(2015)年時点で林業従事者は4万5000人で、昭和55(1980)年に比べ3分の1以下。65歳以上の割合を示す高齢化率は林業が25%で全産業の13%を大きく上回る。令和3年の林業での1000人当たりの死傷者数は24.7人で全産業の平均(2.7人)と比べて突出して高い。全国木材組合連合会の本郷浩二副会長は「人命を軽んじる資材として敬遠される懸念さえもある」と警鐘を鳴らす。

木造建築の増加は続くとみられる。国内林業にとって人材確保のチャンスだ。人材育成支援や安全講習の強化など働きやすい環境づくりに向けた取り組みが急務となる。(高木克聡)

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