人類史上、最大の革新は言語の誕生だった。知性の創生と共有によって人間活動の基盤が生まれた。言語の起源と進化の謎を探ると、われわれホモ・サピエンスの本質が見えてくる。
概念を複合化
言語は人間にとって、どのような存在なのか。その役割を考えると、まず会話によるコミュニケーションが思い浮かぶ。しかし、他者との意思疎通は表情やジェスチャーが担う部分もある。言語を持たない動物同士でも、ある程度のコミュニケーションは可能だ。
より本質的な言語の役割は思考を生み出すことにある。人は何かを考えるとき、頭の中で無意識に言葉を使っている。目の前で起きたことを考えるのは動物でもできるが、非現実的なことを想像したり、将来を精緻に予測したりできるのは人間だけだ。それを可能にしたのが言語だという。