主張

旭川のいじめ調査 もっと被害者に寄り添え

記者会見する市教育委員会の黒蕨真一教育長=24日午後、北海道旭川市
記者会見する市教育委員会の黒蕨真一教育長=24日午後、北海道旭川市

北海道旭川市で昨年3月に凍死した中学2年女子生徒について、市教育委員会の第三者委員会は上級生らによるいじめがあったと認め、凍死は自殺だったと判断した。

ところが最終報告書はいじめと自殺の関連性については「不明」と判断を回避した。「調査が不十分」とする遺族側の訴えを受け、市は再調査を行う方針を表明した。

何をやっているのか。遺族の怒りは当然である。

女子生徒に対するいじめは、陰惨を極めた。入学直後から上級生らから性的行為の動画送信を求められるなどのいじめを受け続け、1年の6月には他の生徒らに「死にたい」と訴え、川に入水する自殺未遂を起こした。

学校側は聞き取り調査を行ったが「いじめ」とは認定せず、いじめ防止対策推進法の「重大事態」としての対処もしなかった。女子生徒は転校したが不登校となり、昨年2月に失踪、3月に凍死体で発見された。

長文の報告書に書かれたいじめの執拗(しつよう)さと学校側の対応の不備、冷淡さには胸が悪くなるほどだ。それでいて、自殺との因果関係については「明らかにできるだけの情報を得ることができず不明」とする一方で、学校や市教委がいじめの事実に真摯(しんし)に向き合い、適切な支援を行うことができていれば「極端な選択(自殺)をしない結果もあったのではないか」と結論づけている。

因果関係を認めているに等しいではないか。

報告書は、いじめ防止法についての「無理解」に対応不備の理由を求めたが、それ以前に学校や市教委には常識や情が決定的に欠けていた。それは第三者委の報告書にもいえる。

ある殺人事件公判の論告はこう訴えた。「窓の外には夜空が広がっている。夜が明けると雪化粧になっていた。雪がいつ降ったか見ていなくても、夜中に降ったと認定できる」「健全な社会常識に照らして合理的かどうかを判断してほしい」。直接証拠を欠き、状況証拠を重ねたその裁判員裁判では、死刑が選択された。

問われているのは、同様の「健全な社会常識」である。過酷ないじめに苦しんで自殺未遂を起こした女子生徒が、自殺した。被害者の気持ちに寄り添えば、おのずと結論は出るはずである。

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