「出来レース」にはならない? 維新大阪市長予備選、選考委に松井氏ら

来春の大阪市長選の公認候補を「予備選」で決めることが発表された「大阪維新の会」の政治資金パーティーで、登壇した松井一郎前代表 =9月15日、大阪市北区(永田直也撮影)
来春の大阪市長選の公認候補を「予備選」で決めることが発表された「大阪維新の会」の政治資金パーティーで、登壇した松井一郎前代表 =9月15日、大阪市北区(永田直也撮影)

来年春に見込まれる大阪市長選を巡り、地域政党「大阪維新の会」は党の公認候補を決める「予備選」を初めて実施する。10月からはその予備選立候補者の選考が本格化。話題づくりと「開かれた政党」のアピールにより、松井一郎市長の政界引退に伴う党の求心力低下を少しでも和らげたい思惑がある。もっとも、選考過程で現在の幹部が関与できる仕組みに「グレー」との指摘も。予備選が看板倒れに終わらないか、〝ポスト松井〟をにらんだ党の実行力もまた、試されることになりそうだ。

競争の促進

「人材が豊富だからですよ。吉村世代の」

今月22日、記者団に予備選の狙いを問われた松井氏はこう答えた。

吉村世代とは、平成23年の統一地方選で当時大阪市議に初当選した吉村洋文・大阪府知事(大阪維新代表)と同期の地方議員らを指す。この世代の立候補に際しては幹事長を務めていた松井氏が直に面接し、公認を与えた。吉村世代は今や維新の創設メンバーに代わって党運営の中心的役割を担う。現幹事長の横山英幸府議や政調会長の岡崎太市議らがそうだ。

予備選導入までの過程では、大阪市長の任期満了と同時に政界を引退する松井氏の意向が強く働いた。後継指名による「禅譲」は党内にしこりを残す。吉村世代を中心とした「競争」こそが党の活性化につながる-。松井氏は昨年10月の時点で周囲に予備選の構想を明かし、こう語っていた。「公募して維新の公認を勝ち取る。来年の今頃は面白くなる」

決選投票までに絞り込み

予備選の要綱によると、今月30日まで一般市民を含めて予備選に立候補したい人を公募。応募者が6人以上の場合は、選考委員会で2、3人に候補者を絞り込む。選考委のメンバーには松井、吉村両氏に加え、国際政治学者の三浦瑠麗氏、キャスターの辛坊治郎氏らが名を連ねた。

公開討論会を経て12月10日に大阪維新の国会議員や地方議員、首長のほか、党費を納める大阪府内在住の一般党員、無料通信アプリ「LINE(ライン)」を通じて会員登録した府内在住の「準党員」による決選投票で公認候補を決める。準党員については、1票の比重を軽くする方針という。

当初は広く民意を反映させるため世論調査を活用する計画だったが、総務省から公職選挙法が禁じる「事前運動」に抵触する恐れがあると指摘され、軌道修正を余儀なくされた。もっとも松井氏の思惑もあり、予備選実施のスタンスは崩さなかった。

得票増大効果も

予備選といえば、米大統領選を前に二大政党が行うものが有名だ。海外の政党政治や予備選に詳しい東京大大学院の伊藤武教授によれば、その主なメリットに「得票増大効果」が挙げられる。「予備選は緩やかな支持層の動員につながる。有権者に対してもオープンな党と印象付けることができ、好影響をもたらす可能性がある」

また法政大大学院の白鳥浩教授(政治学)は、主張がまったく異なるさまざまな候補者による政策討論、それらを通じた多様性のアピールこそ予備選の目的と説明する。

ただ今回の維新の予備選では、2次選考の段階で松井氏や吉村氏の意向を反映させることが可能だ。普段は党内の意思決定に関与しない党員ら「外部」の人間が候補者を選ぶことに、予備選の結果を正当化する根拠があるという見解からは「選考委のプロセスはグレーゾーンのように感じる」(伊藤氏)という。

選考委の存在は、候補者の質を担保するという点でリスクヘッジにはなるものの、現時点ではいかなる基準で候補者をふるいにかけるのか、その点も明確に示されていない。

先月27日には、国政政党の日本維新の会が結党以来初の代表選を行い、馬場伸幸衆院議員が選出されたが、党内に大きな影響力を持つ松井氏が早々に馬場氏の全面支持を打ち出し、対抗馬になり得た参院議員が立候補を断念した経緯があり、「出来レース」との批判がつきまとった。

予備選の決選投票の有資格者が「大阪府内在住者」であることも、大阪市長選の候補者選びという点から範囲が広すぎるという指摘もある。白鳥氏は、今後の討論会などで大阪市政への議論が深まらなければ「予備選が単に候補者の知名度アップのための方策になってしまう」と話した。(北野裕子、矢田幸己)

選考委には辛坊氏らも 維新大阪市長予備選

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