記者発

師弟の絆 紀子さまと琉球舞踊 社会部・緒方優子

「これは宝物でございますので、差し上げませんよ」

今月4日、沖縄の本土復帰50周年を記念して横浜能楽堂(横浜市)で開催された琉球芸能の公演。終演後、報道関係者の取材に応じた舞踊家の志田房子さん(85)は、丁寧に折りたたまれたティッシュペーパーを大切そうに握りしめ、ユーモアを交えてこう答えた。公演を鑑賞した秋篠宮妃紀子さまが、懇談中に思わず涙を流した志田さんに、バッグからそっと取り出して渡されたものという。紀子さまは以前、志田さんから琉球舞踊の指導を受けられていた。

秋篠宮さまとの結婚前、学習院大に通われていたころのことだ。大学のゼミで訪れた沖縄で琉球舞踊に魅せられ、ゼミを担当していた沖縄学研究者の外間守善(ほかま・しゅぜん)氏(故人)を通じ、志田さんに連絡を取られたという。外間氏は、沖縄に心を寄せられてきた上皇ご夫妻の進講役を務めたことでも知られる。

海外の若者との国際交流の機会に「沖縄の踊りを紹介したい」と稽古を願い出られた紀子さま。「私の稽古場にいらして。とても勘がよろしくて」(志田さん)

紀子さまがその時に習われた「貫花(ぬちばな)」という踊りのもとになった古典舞踊をこの日、志田さんの娘の真木さんが披露した。紅白の花を糸でつないだ、「レイ」(ハワイの首飾り)のような小道具が印象的で、思いを秘めたような、かれんな踊りだった。《美しい桜の花を流れる小川からとってつなげ、愛しい人に贈る》。曲には、そんな意味が込められているという。

「貫花を差し上げる人が決まりました」。秋篠宮さまとの婚約が報じられた際、紀子さまは志田さんに、こう、打ち明けられていたという。

結婚後もしばらく稽古場に通われたという紀子さま。長女の小室眞子さん(30)も幼いころから琉球舞踊を学び、志田さんの公演に母娘で足を運ばれたこともあった。

新型コロナウイルス禍もあり、久しぶりの再会となったこの日、紀子さまは志田さんの体を気遣い、「踊りを続けてください」と声をかけられたという。「ぽろっと涙がこぼれてしまって…」。そう話しながら、志田さんの瞳に再び浮かんだ涙に、かつて師弟関係にあったお二人の絆の強さを感じた。

【プロフィル】緒方優子

平成22年入社。神戸、水戸勤務の後、27年から東京本社社会部。原子力取材班、警視庁捜査1課担当を経て、現在宮内庁を担当。

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