三冠王まっしぐらの「村神様」 不発の助っ人も後押し

「赤鬼」の愛称で親しまれた近鉄のマニエル。1979年は顔面に死球を受けて約2カ月離脱しながらも本塁打王のタイトルを獲得し、阪急・加藤英司の三冠王を阻んだ=藤井寺球場
「赤鬼」の愛称で親しまれた近鉄のマニエル。1979年は顔面に死球を受けて約2カ月離脱しながらも本塁打王のタイトルを獲得し、阪急・加藤英司の三冠王を阻んだ=藤井寺球場

史上最年少、そして令和初の三冠王へひた走るヤクルトの村上宗隆。本塁打、打点の2部門は2位を大きく引き離し、不安視されていた打率も8月に4割4分をマークしてトップに立っている。すさまじいばかりの打棒だが、今季の本塁打王争いに外国人選手の名前は一切出てこない。助っ人たちのレベルの低さも、村上の偉業をアシストしたかたちだ。

2012年に巨人・阿部の三冠王を阻んだヤクルトのバレンティン。その翌年、プロ野球記録となるシーズン60本塁打を放った=2013年10月2日、神宮(斎藤浩一撮影)
2012年に巨人・阿部の三冠王を阻んだヤクルトのバレンティン。その翌年、プロ野球記録となるシーズン60本塁打を放った=2013年10月2日、神宮(斎藤浩一撮影)

助っ人が阻んだ偉業

2012年、巨人の4番で正捕手、阿部慎之助は打撃好調で、シーズン終盤で打率、打点の2冠をほぼ確定させていた。翌年に歴代最多のシーズン60本塁打を放つバレンティン(ヤクルト)と争った本塁打数は、阿部が9月25日に27号を放った時点で2本差。十分にチャンスはあると思われたが、プレッシャーに襲われたのか、残り8試合でまさかの0本に終わる。一方のバレンティンは2本上積みし、31本塁打で2年連続のタイトルを手にした。

阪急(現オリックス)の黄金時代を支えた加藤英司は1979年、打率3割6分4厘、35本塁打、104打点と3部門ともキャリアハイの数字を残したが、本塁打王争いではマニエル(近鉄)という強敵が立ちはだかった。

加藤は10月5日に35号を放って並んだが、ライバルは8、9日に連発し、2本差を付けた。加藤は2試合で追いつけず、「赤鬼」の前に涙をのんだ。

本塁打を放った小笠原②を迎えるセギノール(中央)と新庄(左)=2004年9月15日、西武ドーム(尾崎修二撮影)
本塁打を放った小笠原②を迎えるセギノール(中央)と新庄(左)=2004年9月15日、西武ドーム(尾崎修二撮影)

平成唯一の三冠王、2004年の松中信彦(ダイエー=現ソフトバンク)は打率3割5分8厘、120打点、44本塁打と素晴らしい数字をマークしたが、本塁打王はセギノール(日本ハム)と分け合っている。

ノムさんのライバルは

戦後初の三冠王に輝いた1965年の野村克也(南海=現ソフトバンク)のライバルだったのが、スペンサー(阪急)だ。

スペンサーは10月3日、南海とのダブルヘッダー第2戦で38号を放ち、野村は2本差に詰め寄られた。野村は13試合、スペンサーも11試合を残しており、キング争いの行方が注目されたが、思わぬ結末を迎えた。5日にスペンサーがバイクを運転中、車と衝突して右足を骨折したのだ。今季絶望と発表され、三冠王をほぼ手中にした野村は「人の不幸を喜べますか」とコメントしたという。

一発より巧打&好守

このように三冠王を目指す打者の前には強力な外国人スラッガーが立ちはだかったものだが、村上にそんなライバルはいない。今季のセ・リーグ本塁打ランキングを見ると、外国人選手はポランコ(ともに巨人)の24本が最高。山川(西武)が39本塁打で独走するパも、オグレディ(西武)、昨季29本だったレアード(ロッテ)が15本打っているだけだ。

昨季28本塁打のオースティン(DeNA)は右肘の手術、新型コロナウイルス感染などの影響で今季はわずか1本にとどまる。2018年に41本塁打、19年に43本塁打で2年連続キングとなったソト(DeNA)は15本と、軒並み数字を落としている。

史上最年少での三冠王へひた走るヤクルトの村上。本塁打、打点の2部門は2位に大きく水をあけている=8月17日、神宮(今野顕撮影)
史上最年少での三冠王へひた走るヤクルトの村上。本塁打、打点の2部門は2位に大きく水をあけている=8月17日、神宮(今野顕撮影)

コロナ禍による調整の難しさ、投手のレベルアップなどさまざまな要因が考えられるが、各チームとも日本選手の長距離砲がいるため、守りや巧打を売りにする外国人選手を連れてくる傾向もあるといえる。これらの選手は大振りしないことが特徴だが、見逃し三振の比率も高い。「もっと振ってほしい」と愚痴をこぼす首脳陣もいる。

伝説級スラッガーとの競演を

村上がシーズン50本塁打を突破してクローズアップされたのは、バレンティンのほか、54本のバース(元阪神)、55本のローズ(元近鉄など)、カブレラ(元西武など)ら伝説のホームランバッター。ほかにもブライアント(元近鉄)、ラミレス(元ヤクルトなど)ら個性的な外国人の長距離砲がファンをわかしてきた。このレベルのスラッガーと村上の本塁打王争いをいつかは見てみたい。(記録はいずれも9月23日現在)

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