不登校の子供が笑顔になれる 主婦が始めた癒やしのダンス教室

北島章子さんが立ち上げたダンス教室で体を動かす親子=奈良県生駒市(北島さん提供)
北島章子さんが立ち上げたダンス教室で体を動かす親子=奈良県生駒市(北島さん提供)

踊って体を動かせば、きっと笑顔になれる―。不登校の子供とその親の居場所をつくろうと奈良県生駒市に住むダンサーの北島章子さん(38)が9月からダンス教室を始めた。ダンス講師として指導歴がある北島さんは、自身の小学2年の長男(7)の不登校に悩んだ経験がきっかけで教室を開くことを決意した。「息子のおかげで成長できた私が、次は誰かを助けたい」と語る。

居場所を求めて

北島さんには、長男を無理やり幼稚園に連れて行った苦い思い出がある。「初めての子育てでもあり、周りの目が気になった。いつか慣れるといわれ、泣き続ける長男を力ずくで幼稚園に連れていった」

ただ、そんな日々に疲れ切り、1年半後、幼稚園を辞めた。同時に「子供の居場所を見つけたい」と思うように。そんなとき、NPO法人が運営し、自然の中で幼児の保育や教育を行う「いこま山のようちえん」を知った。「これなら大丈夫かも」。当時住んでいた大阪府東大阪市から同県生駒市へ移住した。

不登校の子供や親の居場所づくりへの思いを語る北島章子さん=奈良県生駒市
不登校の子供や親の居場所づくりへの思いを語る北島章子さん=奈良県生駒市

カリキュラムがない自由な保育方針が合い、長男は生き生きと喜んで通うようになった。しかし昨年4月、小学校入学後、再び不登校になった。考えた末、同年7月、知人に紹介された生駒市内の民間のフリースクールに連れていくと、長男は再び元気を取り戻した。

今では毎日1人で電車で通い、表情も豊かになった。「将来どんな仕事をしようかな」と前向きな言葉も増えたという。「フリースクールという居場所を運よく見つけることができたからよかったが、これはレアケース。居場所がみつからない子供のために、何かできないか」。こう思うようになった。

次は自分が…

そこで考えたのが自身の「武器」であるダンスだ。北島さんは、7歳からダンスを始め、子供向けのダンス教室などで約20年間、講師として指導した経験がある。

「ダンスをすると、気持ちが前向きになる。親子で体を動かすことはストレスの発散にもつながる」。ダンスが持つパワーを伝えたい―。こう思うようになったとき、知人でアートスクール「アトリエe.f.t.」(大阪市)の代表、吉田田(よしだだ)タカシさん(45)に声をかけられた。

吉田田さんはダンスを使った支援を提案。北島さんは同スクール生駒校で、毎月第2水曜の午前11~12時半、不登校の子供や親を対象としたダンス教室「トーキョーコーヒー生駒スキマダンスクラブ」を始めることにした。

北島章子さんが立ち上げたダンス教室で体を動かす親子=奈良県生駒市(北島さん提供)
北島章子さんが立ち上げたダンス教室で体を動かす親子=奈良県生駒市(北島さん提供)

参加費は1人2千円。教室のコンセプトは、踊りたい人は音楽に身を任せ、自由な発想でダンスを楽しむこと。単にダンスを教えるのではなく、悩みを聴き、話せる場所をつくりたいという。長男のフリースクールでの経験を通じ、子供も親も悩みを打ち明けられる第三者との関わりが必要だと感じた。教室では自身が、子供たちにとってそんな存在になりたいと考えている。

初開催となった9月14日。教室には子供と親ら計9人が参加した。参加者からは「体を動かして、気分も晴れた」という声が寄せられた。北島さんは「まずは大人が楽しめる場所にしたい。それが子供の居場所にもつながる。いつか、みんなで舞台を作れたら最高。学校だけが居場所ではない」と意気込む。

不登校の小中学生約20万人

文部科学省によると、令和2年度の不登校の小中学生は19万6127人と過去最多となった。

文科省は今年8月、不登校の児童生徒らが、自宅からオンラインでスクールカウンセラーらに悩みを相談できるよう、令和5年度に拠点となる「児童生徒支援センター」を全国300カ所に設置する方針を決めた。

また、少人数指導や個々の習熟度に合わせた柔軟な学習機会を提供する「不登校特例校」の設置も促す。

ただ、民間のフリースクールに関する支援は今後の課題だ。平成27年の文科省調査では、フリースクールの平均授業料は月3万3千円で、保護者の経済的な負担は大きい。

一部自治体では支援の動きもある。滋賀県草津市では昨年9月、市内在住でフリースクールに通う小中学生がいる家庭を対象とした支援を始めた。

保護者からは「子供が前向きになった」や「金銭的な負担が心の重荷にもなっていたが、助かった」といった声もあったという。

市の担当者は「不登校の子供たちが少しでも外に出て、少人数でも人とかかわれる居場所をつくることが、将来の社会的自立にもつながる」と説明している。(田中一毅)

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