「知らない自分に出会えた」福地桃子が新作映画主演

2作目の主演映画が公開される福地桃子 (石井健撮影)
2作目の主演映画が公開される福地桃子 (石井健撮影)

「あの娘は知らない」は繊細な佳作。福地桃子(24)の主演を前提に、脚本もいわゆる「当て書き」だ。主人公は福地がモデルのはずだが、台本を読んで「これが私?」と本人は驚いた。「自分でも知らない自分に出会えた。貴重な経験になりました」と語る福地に話を聞いた。

主人公の中島奈々は事故で両親を亡くし、海辺の小さな旅館を一人で守っている。臨時休業中に藤井俊太郎という青年が「泊めてほしい」と訪れる。亡くなった恋人の最後の足取りをたどっているのだという。

奈々に福地。俊太郎は岡山天音=あまね(28)だ。監督は気鋭の井樫彩=いがし・あや(26)。海と空、光と影、波の音やセミの鳴き声…。晩夏の美しい映像と印象的な音響で、喪失感を抱えた若い2人の心の交流を描く。

脚本も井樫監督。福地と面談し、その印象をふくらませて奈々という主人公を作った。

井樫から「福地さんを奈々に投影した。奈々は福地さんでもある」と伝えられ、福地は戸惑った。「自分に重なる部分は見つからない…」

奈々は心の奥にある思いを秘め、複雑な悲しみを背負っている。だが、演じていて違和感はまったくなかった。なぜだろうと福地は考えた。「自分では気づけていない自分の中の何かを、監督がすくい上げ、奈々の中に存在させたのかもしれない」

映画「あの娘は知らない」©LesPros entertainment
映画「あの娘は知らない」©LesPros entertainment

題名の「あの娘」は、実は福地のことを指すのでは?

「それは分からないです。でも、この撮影は役ではなく自分と向き合い、自分が知らなかった自分とも出会えました。これからの私を形成するうえで、貴重な経験になったはず」

昨年6月、静岡県伊東市で撮影。しっとりとした時間が流れる作風とは裏腹に、作業は詰まった日程で慌ただしく行われた。「〝勢い〟のある撮影現場でした」と言って「ふふっ」と笑う。転がる鈴のような声だ。

NHK連続テレビ小説「なつぞら」(平成31年)で注目された。現在、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で北条泰時の妻、初(はつ)を好演している。

「あまのがわ」(31年、古新舜=こにい・しゅん=監督)以来2作目の主演映画だ。

「人と人が一緒にいる意味を考えさせられましたね。奈々と俊太郎のように、恋人であるとか男と女であるとか、理由などなくても一緒にいられる〝名前のない〟関係っていいな。この映画が、簡単に解決できない課題を抱えた人に手を差し伸べるような存在になれたらと願っています」(石井健)

ふくち・ももこ 平成9年生まれ、東京都出身。28年デビュー。映画は、主演作のほか「あの日のオルガン」「サバカン SABAKAN」。ドラマは「チア☆ダン」「消しゴムをくれた女子を好きになった。」など。父は俳優の哀川翔(あいかわ・しょう)。

23日から東京・新宿武蔵野館、大阪・シネ・ヌーヴォ(公開日未定)などで全国順次公開。1時間16分。

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