「へんてこ野菜」で絵の具作製 食品ロス削減へ女子大生の挑戦

規格外野菜から絵の具(左下)を作った山内瑠華さん=京都市北区(太田優撮影)
規格外野菜から絵の具(左下)を作った山内瑠華さん=京都市北区(太田優撮影)

形がいびつで、店頭に並ばず廃棄される「規格外野菜」を原料にした絵の具が人気だ。その名も「おやさい絵の具」。野菜好きの女子大学生が「へんてこりんでもええやん!」をモットーに考案し、子供向けワークショップで活用されている。活動団体は8月、合同会社に移行し、ゆくゆくは株式会社化も目指す。食品ロス対策の一環として、国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)の取り組みとしても注目を集める。

筆に絵の具を含ませ画用紙に滑らせると、鮮やかな赤に染まる。熟したトマトを思わせる色合いだが、実は原材料はそのトマト。ほかに黄や紫、緑といった絵の具があり、全て規格外のカボチャやムラサキイモ、ホウレンソウなどから生まれたというから驚きだ。

「人工的ではない優しい色と、絵の具から香る野菜のにおいが特徴」と、考案した立命館大4年の山内瑠華(るか)さん(21)=京都市右京区=は笑顔を見せる。

農業を営む祖父母や父の姿を見て育った山内さんにとって、規格外野菜は身近で店頭に並ばないことが当たり前の存在だった。

転機となったのは令和2年夏、新型コロナウイルス禍で自宅での生活が続いたこと。畑で規格外野菜を見かけ、「何とか生かせないか」と思案するうち注目したのが「色」だった。「野菜の自然な色は形や味に関係なく作ることができるはず」と、絵の具づくりを目標に据えた。

しかしノウハウはなく、友人らと農家から規格外野菜を購入し、ミキサーでペースト状にするなど試行錯誤を重ねた。京都芸術大で染織などを学ぶ学生らが加わり、専門知識も得られるように。約1年半前に小松菜を機械で乾燥させてパウダー状にし、水彩絵の具でも使われる樹液「アラビアガム」と混ぜて実用化にこぎつけた。以来、10種の野菜で10色の絵の具をつくり出し、昨春からインターネットで販売している。

また仲間と学生団体「ラピスプライベート」を立ち上げ、小中学校や商業施設で、子供向けにおやさい絵の具を使った出前授業やワークショップを60回ほど主催。食品ロス削減の大切さや規格外野菜の活用方法について伝えてきた。

 「おやさい絵の具」を使ったイベントでぬり絵をする子供(ラピスプライベート提供)
「おやさい絵の具」を使ったイベントでぬり絵をする子供(ラピスプライベート提供)

こうした活動は山内さんの心境にも変化を与えた。「中高生のころは友達や先生が求めるような優等生を演じてつらかった。でも、ふぞろいな野菜を通して、完璧でなくても輝ける場所があると感じられるようになった」。今では同じ悩みを持つ子供らに「へんてこりんでもええやん」と伝えているという。

今後は、仲間と立ち上げた団体の株式会社化を視野に入れ、絵の具以外に規格外野菜の使い道を提案するなど事業の拡大を目指す。「規格外野菜は『捨てるだけ』と、マイナスなイメージを持たれがちだが、こんなこともできると驚きや発見を示していきたい」。へんてこりんな野菜との挑戦は続く。

絵の具5色セット(各3グラム)と樹液で1千~1500円(使用する野菜の種類によって変動)。粉末を樹液に混ぜて使用する。問い合わせはラピスプライベート(090・1143・1321)。(太田優)

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