「アリの街」のマリアと「神父」、舞台で今に伝える 10月、東京・浅草

演劇「アリの街のマリアとゼノさん」の稽古風景。歌やダンスで楽しめる構成にもなっている
演劇「アリの街のマリアとゼノさん」の稽古風景。歌やダンスで楽しめる構成にもなっている

戦後間もなく、戦災で家を失った人らが浅草(東京都台東区)付近に集まり、廃品回収で生計を立てていた通称「アリの街」。この街を献身的に支え早世した女性とポーランド人「神父」の存在を伝えようと、演劇「アリの街のマリアとゼノさん」が10月7日から、浅草の劇場で上演される。ウクライナ侵攻が続く今、戦争は子供や貧しい人にこそ大きな犠牲を与えることも考えてほしいと、関係者らは期待する。

2人はポーランド人カトリック修道士、ゼノ・ゼブロフスキーさん(1891年ごろ~1982年)と、信者だった北原怜子(さとこ)さん(1929~58年)。

アリの街を支えたゼノ〝神父〟(アリの街実行委員会提供)
アリの街を支えたゼノ〝神父〟(アリの街実行委員会提供)

社会から蔑(さげす)まれたアリの街に飛び込み「神父」と呼ばれたゼノさんは、住民とともに廃品回収業を組織化した「蟻(あり)の会」を作り、安定した生活が送れるようにした。北原さんはゼノさんの勧めで、この街に住み、子供らに勉強を教えるなど奉仕し「アリの街のマリア」と呼ばれたが、結核のため28歳で亡くなった。

「アリの街のマリア」と呼ばれた北原怜子さん(アリの街実行委員会提供)
「アリの街のマリア」と呼ばれた北原怜子さん(アリの街実行委員会提供)

昭和35年、アリの街は都の要請により現在の江東区潮見に移転、2人もいつしか忘れられた。

子供たちに囲まれるゼノ〝神父(アリの街実行委員会提供)
子供たちに囲まれるゼノ〝神父(アリの街実行委員会提供)

平成29年、区民らが「アリの街実行委員会」(北畠啓行代表)を結成し、歴史を掘り起こす活動を進めており、今回の舞台を共催する。

演劇「アリの街のマリアとゼノさん」は、史実に2人の葛藤や、アリの街の人々の交流などのオリジナルストーリーやダンスを加え完成した。脚本と振り付けは岩浦さちさん、演出は千頭和直輝さん。音楽グループ、上々颱風のベーシスト、西村直樹さんらのユニット「来夢来人」が生演奏で彩りを添える。

戦争の傷痕の残る時代がテーマだが、岩浦さんは「難しい脚本にならないよう、ダンスや音楽で楽しめるよう心掛けた。ただ、戦争が差別や格差を生む。それを繰り返してはいけないと少しでも感じてもらえれば」と期待する。千頭和さんも「ウクライナ侵攻でも新型コロナでも、割りを食うのは貧しい人たち。恵まれた側にいると思われる私たちがどうアプローチすべきなのか。怜子さんの悩みに似ている」と話す。

上演は10月7~9日(各日昼夜2回公演)、台東区浅草2の浅草九劇で。入場料は前売り3500円、当日3800円、高校生以下1500円。12~30日にオンラインで視聴できる配信視聴は2500円。

チケットの購入、問い合わせは兎(うさぎ)亭(03・4291・7458、火曜を除く平日正午~午後6時)、同委のメール(arimachiphoto@gmail.com)。(慶田久幸)

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