ソウルからヨボセヨ

母さんのすき焼き

北朝鮮元工作員の金賢姫氏(桜井紀雄撮影)
北朝鮮元工作員の金賢姫氏(桜井紀雄撮影)

1987年の大韓航空機爆破事件の実行役だった北朝鮮元工作員の金賢姫(キム・ヒョンヒ)氏と先日、先輩記者を交えて久しぶりに会った。インタビュー後に昼食をともにし、金氏の得意料理の話題になった。今は大学生に成長した子供たちにはすき焼きが好評なのだという。

娘は以前、友達に母親のすき焼きを自慢し、家に帰ると「友達がお母さんのすき焼きを食べたいって」とうれしげに報告した。金氏は警察による厳重な警護下にあり、娘の友人らを気軽に自宅に招待できないのはつらいところだ。

金氏は北朝鮮で拉致被害者の田口八重子さんと同居し、日本文化を学んだ。すき焼きもベースは田口さんから習い、韓国で家庭を築いてからアレンジを加えた。

金氏は2010年に日本の軽井沢で田口さんの兄の飯塚繁雄さんや長男の耕一郎さんと会い、北朝鮮での田口さんの様子を伝えるとともに、一緒に料理をして「家族になったみたいな時間」(金氏)を過ごした。

田口さんの手料理も再現しようとしたが、その際は材料がそろわず、断念。田口さんを含む「4人での再会」を約束した繁雄さんは昨年、他界した。

近い将来、田口さんが無事帰国し、耕一郎さんの前で、オリジナルの「母のすき焼き」と、金氏がアレンジした味を競い合う日がくることを願う。(桜井紀雄)

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