露動員令、リトアニア警戒 米「常軌逸した行為」

国連総会で演説するリトアニアのナウセーダ大統領=20日、ニューヨーク(ロイター)
国連総会で演説するリトアニアのナウセーダ大統領=20日、ニューヨーク(ロイター)

ウクライナへの侵略を続けるロシアのプーチン大統領が21日、予備役を徴兵する「部分的動員」を発表し、核兵器使用も辞さない姿勢を示した。地続きの欧州では警戒感が高まり、米国はプーチン政権への批判を一段と強めている。

欧州ではプーチン大統領の発表について、「焦りの表れ」という見方が広がった。ロシアが軍事挑発に出る可能性があるとして、バルト3国のひとつ、リトアニア国防省は「緊急対応部隊が警戒態勢に入った」と発表した。

リトアニアのナウセーダ大統領はプーチン氏の発表について、「絶望にかられた動き。ウクライナは勝利に近づいている」とツイッターで発信した。国防省は、リトアニアに隣接するロシアの飛び地領カリーニングラードも、部分的動員の対象になっていると指摘。緊急対応部隊は、ロシアの挑発に備える必要があると表明した。

一方、ロシアと1300キロの国境を接するフィンランドでは、カイッコネン国防相が「ロシアの動きは驚くには当たらない。わが国の軍は準備を整え、状況を注視している」と述べ、国民に平静を呼びかけた。

北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は、ロイター通信に対し、「戦争がプーチン氏の計画通りに進んでいないことの表れ。大きな誤算があった」と分析した。ロシア軍増強で戦闘が激しくなり、ウクライナ側にも死者が増えると懸念を示し、米欧が長期的に武器支援を続ける必要性を強調した。

トラス英首相と欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は国連総会の会場ニューヨークで会談し、「プーチン氏の部分的動員は、野蛮な侵略が失敗しているサイン」とする声明を発表。マクロン仏大統領は「ロシアは、さらに孤立した。誰もロシアの選択を理解できなくなった」と述べ、ロシアに対する圧力強化の必要性を訴えた。

EUはニューヨークで緊急外相会合を開催。声明で、プーチン氏が核兵器使用をほのめかしたことに触れ、「われわれの決意は変わらない」とウクライナ支援を継続する構えを示した。(パリ 三井美奈)

ロシアのプーチン大統領が核兵器使用の可能性に言及したことについて、米国は「核保有国として無責任」などと批判を強めている。米政府としては、核エスカレートを避けつつ、ウクライナへの軍事支援を拡大し、北大西洋条約機構(NATO)加盟国の対露抑止力を強める困難なかじ取りも迫られている。

バイデン米大統領は21日、国連総会の一般討論演説で、「常軌を逸した行為」とプーチン氏を批判。ロシアが国連常任理事国としてふさわしい国でないと強調した。

プーチン氏の今回の発言の狙いについて、米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は21日、米FOXニュースに対して「この紛争を西側とロシアの対立」に仕立てることにあると指摘した。

「脅しではない」とプーチン氏自ら発言したのは、高機動ロケット砲システム「ハイマース」などの重火器支援でウクライナの反撃を支える米欧の結束を揺さぶる狙いがある、とバイデン政権はみている。

「核の脅し」は初めてではない。侵攻直後に核運用部隊に戦闘警戒態勢を命令。首都キーウ周辺から露軍が撤退し、西側が支援拡大に動いた4月、「(核戦争の危険は)現実のものだ」(ラブロフ外相)と付きつけた。今回は露軍が東部ハリコフ州から敗走した直後だ。

プーチン氏は動員拡大も命じ、占領地域でロシア編入の是非を問う「住民投票」ももくろむ。ブリンケン国務長官は「弱さの証で、ロシアの失敗の象徴」と非難した。だが、ロシア領に編入されれば大量破壊兵器による防衛対象となり、核使用の口実に使われる危険もある。

米政府は21日、ウクライナに「揺るぎない支援を続ける」(ブリンケン氏)と表明した。米国は核戦争へのエスカレートへの警戒を強めつつ、戦車など高性能の兵器を求めるウクライナの反撃力をどこまで強化すべきかという難題に直面している。欧州の核抑止力の点検・強化も不可欠だ。

国際政治学者のウォルター・ラッセル・ミード氏は米紙ウォールストリート・ジャーナルのコラムで「バイデン氏はプーチン氏にウクライナへの核攻撃は米国に対する戦争行為と言わねばならない」と指摘した。(ワシントン 渡辺浩生、ニューヨーク 坂本一之)

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