宝塚月組「グレート・ギャツビー」大作版で再々演 悲劇の純愛、新たな輝き

再会を果たし情熱的にタンゴを踊るギャツビー(右)とデイジー=東京宝塚劇場
再会を果たし情熱的にタンゴを踊るギャツビー(右)とデイジー=東京宝塚劇場

宝塚歌劇月組東京宝塚劇場公演「ミュージカル『グレート・ギャツビー』」(脚本・演出、小池修一郎)が始まった。2度目の再演。本拠地・宝塚大劇場(兵庫県)での公演は新型コロナウイルス禍による中止が相次ぎ、ほとんど幕を上げられなかった。東京公演は、舞台稽古に〝初代ギャツビー〟の杜(もり)けあきが応援に駆けつけて開幕を盛り上げるとともに、無事の公演を祈った。

「グレート・ギャツビー」は、20世紀米国文学を代表するスコット・フィッツジェラルドの同名小説が原作。1920年代の米国を舞台に、大邸宅に住む孤独な成功者、ジェイ・ギャツビーが、かつての恋人、デイジー・ブキャナンへの思いを捨てきれず、破滅していく物語。

月組東京公演は今月10日に始まり来月9日が千秋楽。チケットは即日で完売した。

今月9日、東京宝塚劇場(千代田区)で行われた通し舞台稽古には、初演で主演した杜と相手役の鮎(あゆ)ゆうきが応援に駆けつけた。宝塚で再演は珍しくないが、初演時のトップコンビがそろって稽古に駆けつけるのは異例だ。

稽古終了後、演出の小池、月組トップコンビの月城(つきしろ)かなと、海乃美月(うみの・みつき)を交え、5人で舞台に立って、特別に記者会見。それぞれの作品への思いを語った。

世界初の舞台化

稽古のあと舞台で会見した月組の海乃美月、月城かなと、小池修一郎、杜けあき、鮎ゆうき(左から)=東京宝塚劇場
稽古のあと舞台で会見した月組の海乃美月、月城かなと、小池修一郎、杜けあき、鮎ゆうき(左から)=東京宝塚劇場

平成3年に杜が率いる雪組が「華麗なるギャツビー」のタイトルで上演したのが宝塚での初演。同時に、これが世界初のミュージカル舞台化でもあった。

「宝塚に入団する際、いつか舞台化したいと願っていた小説。無理だと思っていたが、当時の歌劇団理事長の後押しもあり、許諾が取れた」と小池は制作発表会見で語っていた。

「エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-」「ロミオとジュリエット」など宝塚の内外で大作を手掛け、日本ミュージカル界全体を牽引(けんいん)する演出家は、この雪組版で菊田一夫演劇賞を受賞していた。

初演時は、ショー「ラバーズ・コンチェルト」(作・演出、村上信夫)との2本立てだった。宝塚の公演はこのような2本立てが通常だが、瀬奈じゅん率いる月組が東京の日生劇場(千代田区)で再演(20年)した際、小池が2幕1本ものに改稿した。つまり、大作に改めた。そして、瀬奈の月組以来14年ぶりの再演となる今回、その大作版が初めて本公演の演目に選ばれた。

「私どもが演じたときは1時間35分にまとめた1幕もので、中身が濃かった。大作にするのはご苦労があったとお察ししますが、私の想像をはるかに超えて素晴らしかった。ゆるむことも飽きることもなくフィナーレを迎えました」と杜は今回の月組版を称賛した。

初演が自身の退団公演だった鮎は「自分の心の奥に大切にしまっていたものに再会したような懐かしさと、初めて見る新しい新鮮な世界。とても楽しませていただきました」と語った。

いまこそ宝塚を

若い頃、家柄の違いからデイジーとの恋を引き裂かれていたギャツビーは、野心を抱き裏社会ともつながり成り上がっていた。デイジーとやり直したい一心からだ。

「しかし、彼の向上心も純愛も報われない。100年前の物語ですが、100年たっても人の世は変わらないともいえる。この普遍的な悲しみが、この物語の魅力の一つ」と小池は言う。

2幕ものでは2幕目の最後に短いショーがつき、運命に翻弄されるギャツビーとデイジーを演じた月城と海乃が、仲むつまじく楽しげに踊る。

杜は「悲劇ではあったものの、ギャツビーなりの人生を終えた後に、そんなフィナーレを見たら余韻が楽しめないのではと懸念しましたが、どこか別の世界で二人がもう一度結ばれたと喜べる素晴らしさがあり、『(鮎と)私たちもやりたかったね』と話しました」と笑顔で語った。

杜はまた、幕が下りた瞬間、「何があるか分からない時代。いまこそ、この世界に宝塚は必要だと思いました」としみじみ語った。

この月組公演は、7~8月に宝塚大劇場で先行したが、コロナ禍の影響で、約1カ月間の予定が10日ほどしか幕を開けられなかった。

今回、ギャツビーを演じている月城は「『いまこそ宝塚が必要』という杜さんの言葉に背中を押される思い。この素晴らしい作品を、次の時代にもつないでいけるよう精いっぱい頑張ります」と誓った。

相手役の海乃も「健康管理を第一に、一回一回を全力でお届けできるように努めたいです」と話していた。(石井健)

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