人口減少に伴う水道料金収入の減少や、水道設備の老朽化に伴う設備更新需要の増大に伴い、市町村などが行う水道事業の経営環境は厳しさを増している。新潟県では、水道事業(簡易水道を除く)を行う全ての市町村が水道料金を最大3倍に値上げしないと将来、累積赤字に陥るとの試算もある。県は、生活や経済に影響する水道を維持するため「県水道広域化推進プラン」を策定中で、年明けに公開する。
広域化推進プラン
国は平成31年、水道事業の経営基盤を中長期的に強化するため、各都道府県に「水道広域化推進プラン」を令和4年度末までに策定し公表するよう要請した。
広域化とは、主に市町村単独で行っている水道事業を、複数の市町村が一緒になって広域的に行うことによって効率化し、経営の安定化を目指すものだ。広域化にもさまざまな手法があり、最も効果が大きいのは複数の市町村が水道事業を統合し、一体運営するケースとされる。ほかに、複数の市町村が水道施設を共同で設置し、共同利用するケースなどがある。
新潟県が現在策定中の広域化推進プランは、県内水道事業の現状と課題を整理したうえで、新潟、中越、上越などの圏域ごとに広域化を実施した場合の効果をシミュレーションして提示。さらに、広域化に向けた当面の取り組み方針なども盛り込む。
8月29日に開かれた県の水道広域化推進プラン検討委員会(座長・鷲見英司日大教授)はプランの素案を了承。素案に対するパブリックコメント(意見公募)などを経て年明けにも花角英世知事が素案を決済し、正式なプランとして公表される予定だ。
人口減少と費用増加
県内の水道事業の将来像を見通すうえで参考になる報告書が昨年3月末にまとめられた。EY新日本有限責任監査法人(東京)などがまとめた「人口減少時代の水道料金はどうなるのか?(2021年版)」だ。
その中で、小規模な簡易水道を除く国内1232の水道事業体(市町村や団体など)が、令和25年時点で累積赤字を回避し、持続可能な経営を維持しようとするなら、同年時点で水道料金をいくらにすればいいのかを事業体ごとに推計している。人口減による水道料金収入の減少などを加味し、老朽化した水道設備の更新投資額が年々一定割合で増加していくと仮定し推計したものだ。
推計では、県内26の水道事業体は全て水道料金を値上げする必要があるとの結果になった。特に目立つのは小千谷市である=表参照。令和25年時点で水道事業が累積赤字に陥らないようにするには、同年時点の水道料金(20立方メートル)を1万290円(221%増)にする必要があると推計された。これは平成30年度の水道料金の3倍以上。この値上げ率は全国で10番目に高い。
妙高市も累積赤字を回避するため、令和25年の水道料金を7716円(179%増)にする必要があるとみられ、平成30年度時点と比べ3倍近くにしなくてはいけない計算だ。ほかに大幅値上げが必要になると推計されたのは、十日町市(100%増)、五泉市(80%増)、弥彦村(76%増)など。
公共インフラの専門家でこの報告書の作成メンバーの一人、同監査法人の関隆宏氏は「給水人口が少ない小規模な事業体で、将来、急速な人口減少が予想される地方ほど値上げ率が高くなる傾向がある」と指摘。「料金の値上げには議会の承認がいるため、これまでに(必要な値上げを)してこなかったところが結構ある。そうした事業体はあとから負担がのしかかってくることになる」という。
新潟県の推計人口は8月1日時点で約216万人。令和27年には約170万人まで減少するとの予測もある。人口の大幅減少時代に備え、水道事業の経営基盤強化は待ったなしとなっている。(本田賢一)