伝説の「小山駅きそば」 足利と宇都宮で復活

足利と宇都宮で同時に復活した「小山駅きそば」の一番人気、天ぷらと岩下の新生姜のそば(中沢製麺提供)
足利と宇都宮で同時に復活した「小山駅きそば」の一番人気、天ぷらと岩下の新生姜のそば(中沢製麺提供)

栃木県小山市のJR小山駅構内で半世紀以上にわたって愛され、今年1月に惜しまれつつ閉店した立ち食いそば店「小山駅きそば」が今月、東武伊勢崎線の足利市駅前とJR宇都宮駅東口に同時に復活した。かつて運営していた中沢製麺(栃木市平柳町、中沢健太社長)が材料やノウハウを提供し、味を再現した〝公認店〟。両店には初日から開店を待ちわびたファンらが訪れる順調な滑り出しで、伝統の味を受け継ぐ。

「一番人気」も再現

「学生のころから慣れ親しんだ味。『おいしくて安い、日本一立ち食いそばらしいそば』を目指したきそばを多くの市民に食べてほしかった」

足利市南町のニューミヤコホテル足利本館1階に1日、開店した「おやまのきそば足利市駅前店」。運営する志賀産業(同市南町)の松川光宏経営企画部長(49)は、そう力説する。1月下旬に、中沢製麺の中沢社長に直談判し、この日の開店にこぎつけた。

復活した小山駅きそばを味わう客=1日、おやまのきそば足利市駅前店(石川忠彦撮影)
復活した小山駅きそばを味わう客=1日、おやまのきそば足利市駅前店(石川忠彦撮影)

足利市駅から徒歩0分の好立地で、店内は駅そばの雰囲気を思わせる12席ほどの立ち食いスタイル。営業は午前10時半~午後5時で定休日なし。お薦めは小山駅でも一番人気だった天ぷらと岩下の新生姜(しょうが)をトッピングしたそば(600円)だ。

開店初日に一番乗りを果たしたのは、きそばマニアを自認する足利市大前町の会社員、野口真一さん(53)。そばをすすった野口さんの口から「うまい。小山駅の味だ」と感激のつぶやきが漏れた。

アニメで人気再燃

戦後間もなく小山駅で開店したきそばは、食材の卸業者だった中沢製麺が、平成3年から運営を委託されて営業し、両毛線の栃木駅、佐野駅、足利駅にも出店していた。

19年に公開された新海誠監督の人気アニメ映画「秒速5センチメートル」で、きそばをモデルにした立ち食いそば店が登場。公開直後から熱心なアニメファンらによる「聖地巡礼」の地となるなど、人気が再燃した。

駅舎の建て替えなどで相次いで閉店。最後に残ったJR小山駅の宇都宮線上りホームの店も、JR東日本のグループ会社との契約満了で閉店した。

最終営業日だった1月14日には閉店を惜しむ客が行列を作り、1千人以上が最後の一杯を味わった。同30日からは小山市のオフィスヨシダグループ(吉田英樹会長)がキッチンカー「小山のきそば号」を運営。県内外のイベントに出店し、人気を集めている。

中沢製麺には出店相談が寄せられ続けており、今回の2店舗出店は、きそば復活に向けた〝のろし〟ともいえる。中沢社長は「きそばを栃木県のご当地グルメにしたい」と将来に向けた展望を口にする。

県都の玄関口も

新規2店舗のうち、1店舗が県都の玄関口となったのも、中沢社長のビジョン実現への一里塚だ。

複合施設「ウツノミヤテラス」がオープンし、来年8月に次世代型路面電車(LRT)が開業予定など発展著しい宇都宮駅東口。東口から徒歩5分に位置する宇都宮東ホテル(宇都宮市東宿郷)の隣「駅前横丁」にオープンしたのが「駅前横丁 宇都宮きそば」だ。

こちらも立ち食いスタイルで、当面、午前11時~午後2時の営業、日曜定休。同ホテルの朝食プランにもきそばを入れた。同ホテルの北野栄一社長(65)は「昼間、サラリーマンや学生にギョーザ、ラーメンだけではない、安くて早くてうまいきそばを食べてほしかった」と開店を決意した理由を話す。

「夜の街、ビジネス街という印象が強かった駅東口のイメージを変えられるかもしれない」と北野社長。若者に人気のアニメの聖地でありながら、昔懐かしさも併せ持つきそば。その可能性に、多くの人がまちの未来を託している。(石川忠彦)

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