加速するカーボンニュートラル 気候変動対策待ったなし

大雨や強風などの気象災害は多くの犠牲者を出し、生態系に影響を及ぼしている。「『気候危機』とも言われている気候変動問題は、避けることができない喫緊の課題」。令和4年版環境白書が指摘する通り、気候変動対策は、社会を守るために欠かせない。

気象災害頻発

「気候変動対策はなぜ必要なのか。大きくなる気象災害を忘れてはならない」

今年6月に開催された地球環境大賞(主催・フジサンケイグループ)の30周年記念セミナーで講演した東京大学未来ビジョン研究センターの高村ゆかり教授は、そう指摘した。

気象災害と地球温暖化の関係を明らかにすることは難しいが、観測記録を塗り替える気温の上昇や大雨が起こる頻度は確実に高まっている。平成30(2018)年7月に起きた西日本豪雨では河川の氾濫が各地で起き、230人を超える犠牲者を出した。令和元年東日本台風では、河川の氾濫で新幹線の車両基地が浸水したほか、企業の生産拠点に影響を及ぼした。

昨年8月から順次公表されているIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書は、気候変動の原因について人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことは疑う余地がないと初めて明記。世界の平均気温が産業革命以前と比べ、既に約1度上昇したと指摘し、提示した5つのシナリオすべてで気温の上昇幅は2021~40年に1・5度(中央値)に達すると推計した。

また気温上昇に伴い、10年に1度の雨が降る発生頻度は1・3倍となり、上乗せされる雨量は6・7%になったと推計。1・5度の場合、発生頻度は1・5倍で、上乗せされる雨量は10・5%になるなどとした。

高村教授は「過去からの(温室効果ガス)排出で、想定を上回るような雨、気候の変化が生じて気象災害の発生を促し、規模を大きくしている可能性がある」と話した。

14の重点目標

「2050年に温室効果ガス排出を全体としてゼロにする」。日本政府は令和2年、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量から、植林、森林管理などによる吸収量を差し引いて、合計を実質的にゼロにすることを意味する「カーボンニュートラル」を宣言した。昨年4月には、令和12(2030)年度に温室効果ガスを平成25(2013)年度から46%削減することを目指すとした。

政府はグリーン成長戦略で14の重点分野を設定。次の世代を担う新たな産業をつくる戦略を進め、社会のインフラやエネルギーなどを脱炭素、低炭素に大きく転換していく見通しだ。

高村教授は「この1年余りの間に世界のカーボンニュートラルに向かう動きが大きく加速した」と話す。

中長期の視点

高村教授は、企業の姿勢もカギになるとみている。「気候変動対策を考えると、企業の経営に中長期の視点をもたらす」と指摘した上で、「サステナブル(持続可能な)企業には足元での変化に対応すると同時に、新しい技術の開発も含め、中長期的な戦略が必要だ」と語った。

気候変動対策にどう立ち向かうのか。その在り方は新たな社会や新産業の創造につながっている。

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