ファイザー→モデルナの交互接種で感染リスク低減 追跡調査で実態判明「メカニズムは不明」

新型コロナウイルス対策で1・2回目にファイザー社製のワクチンを接種した人が3回目のブースター接種(追加接種)でモデルナ社製のワクチンを接種すると、3回ともファイザーを接種する場合より感染リスクが低くなる可能性があるとする論文を東京大学大学院の研究チームが発表した。先行研究のように、ワクチンの組み合わせと得られた抗体の量を調べるのではなく、人口25万人の山口県下関市のうち15万人のデータを調べることで実態に迫ったという。

職域接種で新型コロナワクチン3回目の接種を受ける日本航空の客室乗務員=2月14日午前、羽田空港(酒巻俊介撮影)
職域接種で新型コロナワクチン3回目の接種を受ける日本航空の客室乗務員=2月14日午前、羽田空港(酒巻俊介撮影)

政府は新型コロナワクチンに関し、原則として1回目と2回目は同じ種類を接種する必要があるとしてきた。一方、3回目については1・2回目の種類に関わらず、ファイザー、モデルナ、武田薬品工業(ノババックス社)のいずれかを接種することができると説明。一部の種類のワクチンは数が足りなかったため、3回目には1・2回目と違うワクチンを接種する交互接種を求める自治体もあった。

こうした中、政府は「ワクチンは、種類よりもスピード」を方針として掲げ、交互接種の有効性をアピール。ワクチンの種類が異なる場合でも3回目接種を検討するよう呼びかけた。厚生労働省や東京都は1・2回目にファイザー、3回目にモデルナを接種した場合、3回ともファイザーだったときと比べてウイルスの働きを抑える抗体価(抗体の量)が大きく上昇したとする論文を紹介して接種率向上を後押しした。

今回、東大の研究チームは、新型コロナウイルスの「ワクチン接種記録システム(VRS)」と新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS、ハーシス)のデータを用いた調査を実施。ハーシスへの診断登録を感染したと見なすことで交互接種の実態を調べた。3回目接種のワクチンの種類と実際の感染予防効果を比較した研究はこれまでなかったという。

調査では下関市で昨年11月22日までにファイザーの1・2回目接種を完了した16歳以上の15万4925人を今年4月15日まで追跡した。対象者の内訳は3回目にファイザーを接種した人が6万2586人(40.4%)、モデルナが5万1490人(33.2%)、3回目の接種をしなかった人が4万849人(26.4%)だった。

年齢や2回目の接種からの日数などを加味して感染リスクを表す「統合ハザード比」を算出したところ、3回目もファイザーだったグループを「1」とすると3回目がモデルナだったグループが「0.62」、3回目の接種をしなかったグループが「1.72」で、交互接種はより高い効果が見込めるとする従来の研究を実態調査で裏付ける結果となった。

研究チームは、ファイザーを接種した人が3回目にモデルナを接種すると3回ともファイザーだった人より新型コロナウイルス感染リスクが低くなることが示されたと結論付け、今回の研究が「個人の意思決定やワクチン確保・流通の政策立案に寄与すると考えられます」としている。

同論文を発表した一人、東京大学医学系研究科イートロス医学講座の大野幸子特任講師は感染リスクが下がった理由について「メカニズムは不明です。今後の基礎研究で解明されることを期待しています」と話した。また、今回の研究ではファイザーとモデルナの順番を逆にした場合や4回目の交互接種については調査していない。ワクチンを組み合わせることの有効性については分からないことが多いとされているが、交互接種の効果を示す発見として注目されそうだ。


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