世界の分断浮き彫り 国連総会の一般討論演説

フランスのマクロン大統領=20日、ニューヨーク(ロイター)
フランスのマクロン大統領=20日、ニューヨーク(ロイター)

【ニューヨーク=平田雄介】ロシアのウクライナ侵攻後初となる国連総会の一般討論演説が始まり、初日の20日はフランスのマクロン大統領ら33カ国の首脳が登壇した。「沈黙の先に平和なし」。マクロン氏ら欧州首脳はロシアと対峙(たいじ)する必要を訴えた。他方、侵攻によるインフレの打撃で厭戦(えんせん)気分が広がるアフリカや中南米諸国は中立的な態度が目立ち、分断される世界情勢が浮き彫りになった。

「アフリカは、『新たな冷戦の温床』になりたくない」。セネガルのサル大統領はアフリカ連合(AU、55カ国・地域)を代表して演説し、ロシアと、ウクライナを支援する米欧諸国の間で、どちらか一方の味方をすることに慎重な姿勢を示した。

アフリカの中立的な態度は、国連総会での投票行動に見てとれる。国連人権理事会でのロシアの理事国資格停止を決議した4月の緊急特別会合では、棄権や投票不参加を含め、賛成しなかったアフリカ諸国は40を超えた。

背景には、冷戦期にソ連がアフリカ諸国の独立闘争を支援し、旧宗主国などとの〝代理戦争〟が展開された歴史の再来を懸念する声がある。現在、ロシアのラブロフ外相は、アフリカ諸国の国連安全保障理事会の常任理事国入りを支持している。サル氏は「アフリカは歴史の重荷に十分苦しんだ。私たちは冷戦の温床となるより、安定と機会の柱となりたい」と訴えた。

アフリカ以外でも、中国やインドが対露批判を控えてきた。こうした国々を念頭に、マクロン氏は「沈黙する人々は、ルールに基づく国際秩序を踏みにじる新たな帝国主義に加担している」と指摘し、対露制裁など「ロシアが戦争の道を捨てるような行動」を取るよう各国に訴えた。

だが、ブラジルのボルソナロ大統領は「外交・経済的な対露制裁に反対する」と明言した。農業大国のブラジルは肥料輸入の多くをロシア産に依存し、対露関係を重視している。ロシアを非難することなく、即時停戦を呼びかけた。

リトアニアのナウセーダ大統領は、「戦争は終わらせなければならないが、何が何でも平和(停戦)にしなければいけないわけではない」と主張した。

リトアニアは、旧ソ連の構成国。「歴史的な経緯から、ロシアの手練手管を知り尽くしている」(国連外交筋)とされる。ナウセーダ氏は、ウクライナの領土を完全に取り戻すことなく停戦しても、いずれ武力侵攻が再開され、露軍が一時占領した首都キーウ(キエフ)近郊で確認された民間人虐殺のような「残虐行為が繰り返される」と警鐘を鳴らした。

同氏はまた、ロシアが米英仏中と今年1月に発表した「核戦争に勝者はなく、決して戦ってはならない」との共同声明に言及。核兵器の使用も辞さない構えで侵攻を始めたロシアの「実際の行動と言葉には大きな隔たりがある」と述べ、不信感をあらわにした。

さらに「私たちは沈黙しない」と宣言。侵略者に対しては「反撃することが唯一の有効な選択肢だ」と強調し、平和の回復のために世界が団結してロシアと対峙すべきだと呼びかけた。

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