NIEの現場から

参院選テーマに「新聞」作成 同級生に啓発も 東京・十文字高

参院選に関する新聞を作成した公民の授業=東京都豊島区の十文字中・高
参院選に関する新聞を作成した公民の授業=東京都豊島区の十文字中・高

十文字中学・高校(東京都豊島区)の浜彰史教諭は公民科で6年(高3)生に、参院選を題材にした新聞を製作させた。有権者としての知識や意識を高めるだけでなく、同級生に向けた投票啓発も目的とした。生徒は自ら選んだ、消費税や女性議員などのテーマに沿って記事を作成し、投開票前日には教室を回り、新聞を読んでもらうよう呼び掛けた。選挙後も、ニュースへの関心が高まるなどの効果が表れたそうだ。

授業は6月にスタート。選挙に関する話題や各政党の公約を調べ、特定の政党や候補者に偏らないようテーマを考えた。生徒は「参議院ってなぁに?」という根源的な疑問や、10代が選挙に行かない理由、選挙とSNS、安保法制、女性議員といった政策や公約に関する話題などを選んだ。

その後、紙の新聞や新聞社のデータベース、総務省や各政党のホームページなどを参考に、約1カ月かけてタブレット端末でA4判1枚の新聞を作成した。

氏原里穂菜(りほな)さん(18)は、国会議員の男女比率に着目。日本の女性議員が少ない現状や理由、経済協力開発機構(OECD)諸国との女性議員比率を比較したグラフを盛り込みながらまとめた。「女性議員の割合が低すぎると政治に多様な民意の反映ができなくなる」との視点から、「たったの一票だけど、その一票が社会のためにつながっていく」と意見を記した。

末次愛渚(まな)さん(18)は消費税について、使途や諸外国の税率と「幸福度ランキング」の関連性について分析。「消費税率が低くなると国民の負担が軽くなるが保障も少なくなる。逆に高くなると負担が重くなる。消費税を公約にしている候補者の意見をしっかり聞き、考えて」と呼びかけた。

安田優花(ゆか)さん(18)は「新聞づくりのために自分でデータを探すことで選挙が〝自分事〟となり、選択に対して積極的になった」と述べた。

新聞は多くの生徒の目につきやすい昇降口正面に掲示した。投開票前日には生徒らが各クラスを回り、新聞を読んでもらうようPRした。今後、18歳を迎えていた生徒に対して投票したかどうかなどのアンケートを行い、作成した新聞の効果を分析する。

浜教諭は「新聞を開く生徒が増えてきているほか、自分の住む自治体の選挙や世界の動きへの関心が高まっている」と振り返る。2学期以降も、選挙や生徒の社会的関心事を深掘りする授業を展開していく。(金谷かおり、写真も)

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