松岡恭子の一筆両断

街の時間を文化で楽しく! 福岡・天神での社会実験

松岡恭子氏
松岡恭子氏

このコラムで何度かご紹介した社会実験「One Kyushu ミュージアム」。9月26日より始まる3回目は、ライブラリー(図書館)が加わります。きっかけはドキュメンタリー映画「ニューヨーク公共図書館」を見たことでした。私は以前、米ニューヨークに住んでいたので、マンハッタンの中心にあるこの巨大な図書館のことは知っていましたが、あちこちに分館があり実にさまざまな取り組みが行われていることを知らず、驚愕(きょうがく)しました。学術的調査や研究の支援はもとより、放課後の子供の勉強、点字の読み方、就労、高齢者の健康維持など多彩な支援活動が展開され、高名な知識人のトークイベントも頻繁に行われています。「図書館は本の倉庫ではない」という言葉が非常に印象的でした。NPOが運営していて、財源はニューヨーク市だけでなく民間からの寄付も相当あるようです。「公立」ではなく「公共」を名に冠するのはそういうことなのか、と膝を打つ思いでした。

都心の空き店舗や老舗ホテルのロビーなど複数の場所を借りて、九州が誇る工芸や産品を紹介しまち歩きを促進、福岡市の都心を九州の文化発信地にしてみる私たちの社会実験は、そもそも街のにぎわいは消費と就労だけには頼れないという危機感から始まりました。コロナ禍が来て約3年がたち、在宅やリモートワークなど急激に起きた変化が、もう日常に定着してきた気がします。一方、再開発事業の天神ビッグバンが進むなか、建物があちこちで解体されており、天神への流入人口が減っているといわれます。このままだと都心に来る、滞在する楽しい記憶が市民の心から遠ざかるのではないかと危惧しています。

 昨年の「One Kyushu ミュージアム」の会場風景。好評だった薩摩切子は今年も展示される=令和3年10月
昨年の「One Kyushu ミュージアム」の会場風景。好評だった薩摩切子は今年も展示される=令和3年10月

「街の時間を文化で楽しく!」が今年のテーマ。会場は3カ所です。西鉄グランドホテルのロビーでは、波佐見焼、高取焼、薩摩切子、有田焼を順に展示していきます。私がセレクトした工芸品を販売するミュージアムショップは商業施設「VIORO(ヴィオロ)」2階。そしてソラリアプラザ1階に設けるライブラリーの各ブースには、音楽、アート、食など多彩な専門家に「館長」を依頼し、都市をテーマに蔵書から本を選んでもらいました。それらをどなたでも自由に閲覧していただけるのが、今回のライブラリー。仮設の「天神公共図書館」となります。例えば福岡の街の歴史を音楽史でたどる本とか、街をテーマにしたたくさんの絵本とか、私も見たことのない本が続々と集まってきています。館長と私がお話しするトークイベントも計10回開催しますので、ぜひお越しください。

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