各国の国葬事情は? 本人の生前の意思尊重

エリザベス女王の国葬が19日行われた。英国では原則として国葬は君主に限られるが、君主の命令などがあれば、この限りではない。本人の生前の意思や遺族の意向を尊重するなど各国にはそれぞれの事情に応じた国葬の形があり、国家元首以外も対象となることがある。

英国

英国では基本的に君主である女王や国王が国葬の対象だが、功績が多大な王族以外の人物にも営まれてきた。万有引力の法則を発見した科学者のニュートン、第二次世界大戦で英国を勝利に導いたチャーチル元首相らだ。実施には君主や議会の承認が必要だ。

欧米メディアによると、1965年に死去したチャーチル氏の国葬では、エリザベス女王が指導者としての功績をつづった文書を議会に提出し、国葬実施を訴えたとされる。賛否が割れて国葬が見送られたのはサッチャー元首相。冷戦終結に寄与するなどしたが、国内では経済手法への反発も強く、生前の本人も望まなかったとされる。

国家元首以外の王室の主要メンバーらには国葬に準じる「儀礼葬」が行われる事例が目立つ。女王の夫、フィリップ殿下や事故死したダイアナ元皇太子妃らが対象となった。(ロンドン 板東和正)

米国

米国では国家元首の現職大統領と元・次期大統領が国葬の対象だが、大統領は他の対象者を指定できる。

最初の国葬は1790年に死去した、建国の父の一人、ベンジャミン・フランクリンとされる。近年ではブッシュ(父)元大統領(2018年)らの国葬が営まれたが、ウォーターゲート事件で辞任に追い込まれたニクソン元大統領の葬儀は、本人の生前の意向などを尊重し、国葬ではなかった。

大統領経験者以外では、第二次大戦の連合国軍最高司令官のマッカーサー元帥ら。1921年には第一次大戦の無名兵士の国葬もアーリントン国立墓地で行われた。(ワシントン 渡辺浩生)

フランス

フランスでは大統領経験者が死去した際、現職大統領が「国民服喪」を公布し、首相が服喪期間や半旗掲揚を定める。

公費で行う葬儀には「国葬」や「国民追悼式」がある。法律の定めはない。国葬は「国費で行う」とされ、1958年以降の第五共和政下で行われたことがない。初代のドゴール大統領以来、大統領経験者が死去すると、外国からの弔問客はカトリック教会の葬儀に出席してきた。

国民追悼式の開催は大統領が決める。2019年にシラク元大統領が死去した際は、教会の葬儀とは別に国民追悼式が行われた。国民追悼式は元来、殉職した軍人のために行うものだったが、近年は民間人も対象になり、2015年には、パリ同時多発テロの犠牲者のために行われた。(パリ 三井美奈)

韓国

韓国では2011年から大統領経験者の国葬を「国家葬」として法律で規定。現職大統領が実施の可否を判断している。それ以前は全額国費負担の「国葬」と一部負担の「国民葬」に区分されていた。長期軍事政権を率いた朴正熙(パクチョンヒ)、ノーベル平和賞受賞の金大中(キムデジュン)の両元大統領は前者、退任後に検察捜査を受ける中で自殺した盧武鉉(ノムヒョン)元大統領は後者の対象となった。どの形式をとるか基準があいまいで議論となるため国家葬に統一された。

昨年、文在寅(ムンジェイン)大統領(当時)は盧泰愚(ノテウ)元大統領の国家葬実施を決め、全斗煥(チョンドゥファン)元大統領については見送った。民主化運動を鎮圧し多数の死傷者を出した「光州事件」(1980年)の責任者として反対世論が強かったことを考慮した。(ソウル 時吉達也)

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