主張

感染データの活用 基盤整え効果的な医療を

新型コロナウイルス禍ではっきりした日本の医療の課題として、デジタル化が遅れているという深刻な現実がある。

紙媒体で感染症データをやり取りしたり、デジタル化していても国や自治体などがばらばらに蓄積したりする。これでは宝の持ち腐れである。

医療データを統合して活用できれば、効果的な治療や感染対策などに役立てられる。日本ではそれが十分ではなかった。

打開に向けて政府は臨時国会に感染症法と予防接種法などの改正案を提出する。ばらばらのデータの統合に向けた「予防接種データベース」の構築などが柱だ。

情報基盤の構築はデジタル化の遅れを解消する第一歩である。新型コロナを含め、今後のあらゆる感染症に備えるためにも、医療データを有効活用できる環境整備を急がなくてはならない。

予防接種データベースに、自治体のワクチン接種記録と医薬品医療機器総合機構が保有する副反応疑いの報告などを匿名化して蓄積する。さらにこのデータを、保健所が全数を把握してきたコロナ患者の感染情報などや、国が蓄積する医療機関の診療報酬データと連結できるようにする。

これにより、ワクチン接種でどれほど重症化が防げたか、効果がどれくらい持続したかなどの分析が容易になる。接種と副反応の関係も把握しやすくなるだろう。

従来は情報基盤の整った英国やイスラエルなどのデータが頼りだった。その上で日本の状況を独自に分析するため、手作業に近い方法でデータを集め、有効性や安全性を確認していた。これでは臨機応変の対応など望めない。

データの有効活用を進めるためには解決すべき課題がたくさんある。セキュリティー確保は特に重要だ。機微に触れる個人情報を扱うので、漏洩(ろうえい)防止に万全の対策を講じなければならない。

診療報酬データから得られない医療機関の臨床情報をどう活用するかも検討すべきだ。そのために必要なのは電子カルテの情報である。ところが電子カルテの普及は必ずしも進んでおらず、中小病院や診療所では5割程度だ。しかも規格がそろっていない。

こうした課題を解決できるかが問われよう。医療データの有効活用は国民の健康と安全に直結する。政府や自治体、医療界はさらに取り組みを強めるべきだ。

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