ビジネスパーソンの必読書

情報工場「SERENDIP」編集部

各界で偉大な足跡を残した人物の訃報が相次ぐ。悼むとともに、故人が世界をどう変えたのか、その影響力を再認識したい。

触覚の可能性

□『世界はさわらないとわからない』広瀬浩二郎著(平凡社新書・1034円)

13歳で視覚を失った人類学者が、自ら企画・運営に当たった国立民族学博物館の特別展「ユニバーサル・ミュージアム―さわる! 〝触〟の大博覧会」(令和3年)の解説を中心に「さわること」の潜在的可能性を探る。

著者は、障害者を「社会的弱者」として配慮や支援をすることのみが「ユニバーサル」ではないと主張する。視覚障害者には、点字の読み書きをはじめとする「触覚」を中心とした、健常者とは異なる豊かな知覚の世界が広がっている。

そうした感覚を、あらゆる人々に体験してもらうために企画されたのが、冒頭で紹介した特別展だ。

この特別展では、ほとんどの展示室の照明が落とされ、視覚以外の感覚を頼りに美術品などの展示品を鑑賞する。「音にさわる」コーナーもあり、音の波動を触覚で捉えたりする。

世界には、音楽や概念など「目には見えないもの」がたくさんある。触覚を研ぎ澄ますことで、見えてくる新しさもあるのだろう。

急成長の要因は

□『なぜ、TikTokは世界一になれたのか?』マシュー・ブレナン著、露久保由美子訳(かんき出版・1980円)

若者を中心に自己表現の場として定着した、ショート動画共有アプリ「ティックトック」。グローバルの累計ダウンロード数が約35億に上る「世界一ダウンロードされているアプリ」だという。このアプリを開発、運営する中国企業バイトダンスの成功の軌跡を追い、成功要因を分析する。

ティックトックをはじめとするバイトダンスのアプリの最大の強みは「レコメンド(おすすめ)機能」だ。閲覧や検索の履歴、機器の種類や位置、年齢・性別・行動特性といったユーザーデータを収集し、独自のアルゴリズム(計算手法)で分析。その結果を基に、ユーザーが見たい動画が次々と表示される。

バイトダンスはすべての自社アプリで収集したデータを統合し、精緻なレコメンド機能を作り上げた。しかも、たまに普段と異なる種類の動画を交ぜ、新しい発見につなげるようにもしている。徹底したきめ細かさが成功要因なのだ。

音楽界を変革

□『終止符のない人生』反田恭平著(幻冬舎・1760円)

権威あるショパン国際ピアノコンクールで、日本人過去最高位タイの第2位となった反田恭平氏。コンサートチケットの入手が困難な人気ピアニストが、生い立ちから留学先での学び、コンクールでの体験、手がけるビジネスなどについて語り尽くしている。

注目したいのは、反田氏の経営者としての顔だ。平成30年にアーティストマネジメント会社、株式会社NEXUSを設立。令和3年には、自身がメンバーを集め、常任指揮者を務めるジャパン・ナショナル・オーケストラを株式会社にした。オーケストラを株式会社化するのは世界でも例が少ないのだそうだ。

実は、コロナ禍に対応し、初めて有料のオンラインコンサートを開催したのは反田氏だ。チケット販売大手イープラスと提携し、2年4月に実現した。この試みがモデルケースとなり、イベントのオンライン配信が一般化した。

さらに新しいビジネスを構想中だという反田氏。クラシック音楽界をどう変えていくのか楽しみだ。

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