規制委発足10年 廃炉翻弄する「水」との闘い

原子力規制委員会は19日、平成24年9月の発足から10年の節目を迎える。東京電力福島第1原発事故の収束に向けた道筋を示し、その工程を監視してきた足跡は、廃炉作業を翻弄する「水」との闘いだったともいえる。後手に回ってきた感もある汚染水対策は希釈処分が見通せる段階までたどり着いた。規制委が「実行可能な唯一の選択肢」として認可した海洋放出が実現すれば、廃炉を成し遂げる大きな一歩となる。

「当初、ここまで時間がかかるとは思わなかった。苦渋の選択であるだけに、理由があったことだろう」

規制委が7月に認可した処理水の海洋放出について、更田豊志(ふけた・とよし)委員長は今月7日の定例記者会見でこう語り、「ようやく処分に向けた計画が進んでいる」と進捗(しんちょく)に期待をのぞかせた。

福島第1原発では、1千基を超える処理水の保管タンクが敷地を圧迫。その数を減らし、廃炉作業の進展に伴って新たに必要となるスペースを捻出するには、放出が「避けては通れない道」(更田氏)だった。

タンクの処理水は多核種除去設備(ALPS)などで大部分の放射性物質を取り除いている。しかし、浄化する方法が十分に確立されていなかったため、事故後の数年間は高濃度のままでの保管を余儀なくされた。当時はタンクの構造や管理手順なども不十分で、漏洩(ろうえい)トラブルが相次ぎ、規制委は対処に追われた。

タンク内の汚染水に起因する放射線は廃炉作業の妨げにもなっていた。平成25年からはALPSが稼働を始め、27年5月にはタンクで保管していた高濃度汚染水の浄化を完了。25年度末時点で10ミリシーベルト近くあった敷地境界での年間被曝(ひばく)線量は大幅に低減し、27年度末には国が定める基準の1ミリシーベルトを下回った。

汚染水はこの10年で発生量も大幅に抑制できるようになっている。汚染水は損傷した原子炉建屋に地下水が流れ込むことなどによって発生する。流入を抑制するため、28年には、1~4号機の周囲約1・5キロの地中を凍らせる「凍土遮水壁」の整備が始まった。前例のない大規模な土壌凍結だったため、効果を疑問視する声もあったが、規制委は慎重に審査を進めて認可に踏み切った。

約1年半をかけて30年9月に凍土遮水壁が完成すると、1日あたり平均で約490トン(27年度)も発生していた汚染水を約170トンまで減らすことに成功した。雨水が入る破損した建屋の屋根の補修なども進め、昨年度には発生量が約130トンまで減っている。

政府が放出開始の目標に掲げた来年春頃の期限は刻一刻と迫りつつある。しかし、その前提条件となる地元漁業関係者らからの同意を得る糸口は見いだせていないのが現状だ。

7月の放出計画認可後の記者会見では、更田氏は「規制当局としての責任がある」として継続的に説明を続ける必要性に言及した。発足10年を迎えた規制委には、3代目の委員長に就任する山中伸介氏のリーダーシップの下で、海洋放出を実現するためにも安全性の発信が求められる。

(玉崎栄次、末崎慎太郎)

規制委10年 すでに5基再稼働の「優等生」関電 課題も

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