農耕が始まって間もない頃、人類繁栄の原動力となるもう一つの革命が始まった。食糧生産を支える家畜の誕生だ。野生動物を繁殖して食肉を作り出す画期的な営みは、どのように生まれたのか。
人的環境に適応
最初の家畜はオオカミを祖先とするイヌだった。農耕が始まる前の一万数千年前に出現し、狩りの協力者として役立ったが、人類史を大きく変えたのは食用の家畜だ。農耕の発祥地に近いトルコ南東部からイラン西部で約1万500年前、野生のヒツジとヤギが家畜になったのが始まりで、ほぼ同時期にウシとブタもこの付近で家畜化された。
野生の哺乳類は5000種を超えるが、家畜になったのは十数種にすぎない。彼らが利用されたのは、群れをつくり集団で行動する、おとなしい、人になれる、人の管理下でも繁殖するなどの特徴があったからだ。人間にとって扱いやすく、好都合な存在だった。