米国で発生した炭疽(たんそ)菌事件など生物兵器によるテロの脅威が顕在化する中、生物兵器に汚染された患者の応急処置に当たる部隊として、平成20年に陸上自衛隊朝霞駐屯地(東京、埼玉)に新設された。
21年には新型インフルエンザの流行に伴い、検疫支援活動を実施。23年の東日本大震災では、東京電力福島第1原発事故の影響下で派遣された隊員の被曝(ひばく)量管理などの支援に腐心した。30年には、三宿駐屯地(東京)に移駐された。
令和2年2~3月、新型コロナウイルスの集団感染が起きたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」では、医師や看護師の資格を持つ隊員が患者の診察にあたった。未知のウイルスに対し、ゾーニングも不十分な環境だったが、派遣期間中に感染した隊員はゼロ。最悪を想定した訓練を続けてきた経験が生かされた。
竹島幹雄隊長(55)は「普段の延長線上に今回の任務があり、日頃の訓練が重要だということを再確認できた」と振り返る。
3年5月からは、国が都内に設置したワクチンの大規模接種会場に隊員を派遣。勤務管理などに奔走した姉崎一1等陸尉(38)は「民間と連携した大規模な業務は初めてで責任は重かった」と強調する。
「本土防衛だけでなく、国民の健康を守ることも自衛隊の重要な任務。隊員たちもやりがいを感じている」。竹島隊長の言葉に感染症のエキスパート集団のプライドがのぞいた。(長橋和之、写真も)=随時掲載