政府は専門家らで構成する全世代型社会保障構築会議を約4カ月ぶりに再開させた。
持続可能な社会保障制度にするため、「給付は高齢者中心、負担は現役世代中心」という構図の見直しに、躊躇(ちゅうちょ)なく踏み込んでもらいたい。
難航が予想されるのは医療・介護分野だ。
75歳以上が入る後期高齢者医療制度では、高収入者の保険料の年間上限額(現行66万円)の引き上げを検討する。
同制度をめぐっては、10月から一定以上の収入がある人は、医療費の窓口負担が1割から2割に上がることが、すでに決まっている。これに続く課題とあって、反発が予想される。
介護保険制度では3年に1度の見直し論議が本格化する。原則1割となっている介護費の自己負担について、収入に応じて2割負担となる対象者を、どの程度拡大するかが焦点だ。
政府は高齢者への負担増の議論を参院選が終わるまで先送りしていた。岸田文雄首相は「負担能力に応じて全ての世代で公平に支え合う仕組みが必要だ」と語った。いつまで従来と同じような発言を繰り返しているのか。
政府が全世代型社会保障改革の議論を始めたのは令和元年9月だ。当時の安倍晋三首相は「社会保障システムの改善にとどまることなく、システム自体の改革を進める」と語っていた。3年が経過したが、改革は不十分だと言わざるを得ない。
団塊の世代は今年から後期高齢者入りし始め、24年には高齢者人口がピークを迎えると推計されている。当然のことながら、医療・介護のニーズは高まる。
平成20年をピークに人口が減少傾向にある中で、高齢者が増える意味合いを、政府はもっと深刻に受け止めなくてはならない。現役世代に過度の負担がかかる仕組みが続けば、社会の活力は減退し、経済への打撃も避けられない。
構築会議は子育て支援の充実や年金制度改革なども含め、年末に報告書を取りまとめる。
これに合わせ、政府は中長期的なスケジュールを示した工程表を策定する方針だ。
単なる工程表ではなく、高齢者数がピークに達するまでの今後20年間を見据えた、対症療法ではない骨太の対応策を示すべきだ。先延ばしはもはや許されない。