【ソウル=桜井紀雄】1987年の大韓航空機爆破事件の実行犯で、北朝鮮で拉致被害者の田口八重子さん(67)や横田めぐみさん(57)と接触のあった金賢姫(キム・ヒョンヒ)元工作員(60)が15日までに産経新聞のインタビューに応じた。金賢姫氏は2人の生存を確信しているとした上で、北朝鮮が死亡を主張するのは最高指導者一家などの「秘密や弱点」を知られたため、それを公開されるのを恐れているからだとの見解を示した。
2002年に当時の朝鮮労働党総書記、金正日(ジョンイル)氏は初の日朝首脳会談で拉致を認めて謝罪した。金賢姫氏は「金正日氏の権威を守るため、彼の指示で行われた犯罪を認めるとは全く考えられなかった」と韓国内でニュースに接したときの驚きを振り返った。「特殊機関の一部」が勝手にやったと責任転嫁しながらも拉致を認めたのは、経済難の中、「日本から莫大(ばくだい)な経済支援を引き出すためだ」と当時判断したという。
死亡とされた被害者8人については「北朝鮮の秘密や弱点」を知ったからだとし、特に北朝鮮が流出を恐れるのが金正日一家に関する真実だと説明。北朝鮮住民でも金一家の下で働いた者は秘密を守るためにその後も外部と隔絶された生活を強いられる点を挙げた。