「日本は米国の仲間だろう」。イスラム原理主義勢力タリバンが実権を掌握して1年が過ぎたアフガニスタンを訪れた。首都カブールで取材中、タリバン戦闘員にこう詰め寄られ、カメラ内のデータの削除を求められた。目を離した隙にカメラからSDカードを抜いて隠し、その場は何とか切り抜けたが、厳しい監視の一端がうかがい知れた。
カブールなど各都市で目についたのは街中にあふれる戦闘員だ。「治安維持」を名目に監視を行い、米軍で勤務した人物らへの弾圧を展開している。タリバンは昨年8月の首都制圧後、旧タリバン政権(1996~2001年)が実施した公開処刑など恐怖政治を、表向きは行っていない。「穏健路線」をアピールしている形だが、実態は違う。取材に応じた音楽家や女性活動家は「監視と弾圧はかつての政権と同じで、本質は変わっていない」と異口同音に語った。
タリバン支配が固定化する一方、急速に拡大する貧困に対してタリバン上層部は有効な解決策を持たない。国内では国際社会の目がウクライナ情勢などに向き、アフガンの注目度が下がっていることに懸念の声が上がっている。「アフガン国民にとって地獄は、むしろこれからだ。世界はアフガンを見捨てないでほしい」。音楽家の男性の言葉が胸に響いた。(森浩)