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旧統一教会問題の解決法は 上席論説委員・乾正人

世界平和統一家庭連合(旧:統一教会)渋谷家庭教会の外観=7月22日午後、東京都渋谷区(関勝行撮影)
世界平和統一家庭連合(旧:統一教会)渋谷家庭教会の外観=7月22日午後、東京都渋谷区(関勝行撮影)

新型コロナウイルス禍の第7波もようやく勢いが衰えてきたせいか、ネオン街は、にぎわいを取り戻しつつあるという。

ならば、確かめねばなるまいと、交差点で信号待ちしていると、ちょっと昔は妙齢だったとお見受けする品の良いご婦人が、新聞を手渡してくれた。

あれ、号外にするようなニュースがあったのかと、よくよく見れば、某宗教団体の機関紙だった。

帰りの車内で読むと、「安倍政権の最悪政は『神国日本』の画策」と、見出しからしてすごい。

中身も「彼は、二度辞任ののちもなおも政権の座を狙い『神国日本』に執念を燃やした」などなど、とても当欄には載せられない暴言や「妄想」のオンパレード。

こういう言説や説法を日常的に聞いていると、真面目な人ほど信じるのだろうなぁ、と酔いがいっぺんにさめてしまった。

読者の皆さんの中には「明らかなウソを流布する宗教法人に政府は解散命令を出せ!」とお思いの方もおられるだろうが、現行法ではなかなか難しい。

「信教の自由」が明記された憲法に基づく宗教法人法は、解散命令を出せるケースをごく狭く規定しているうえに、そもそも命令を出せるのは、政府ではなく裁判所だ。あのオウム真理教でさえ、解散命令が出るまでに時間がかかり、命令が出ても後継団体が、宗教「団体」として生き残っているのはご承知の通り。

世界平和統一家庭連合と名を変え、「コンプライアンス宣言」までした旧統一教会に解散命令を出すのも現実的には難しい。たとえ、出されたとしても「団体」として生き残りを図るだろう。

問題の本質は、日本は敗戦までの36年間統治していた韓国への贖罪(しょくざい)のため徹底的に貢がなければならぬという怨念を抱いていた教祖・文鮮明を少なからぬ日本人がなぜ崇拝してしまったか、だ。

私の知っている同世代か少し上の信者や元信者は、皆さん真面目だ。いや、真面目過ぎる。

元信者の一人は、子供のころは家で朝日新聞を読み、学校では日教組の先生から「日本は戦前悪いことばかりしてきた」と教えられた。だから教会の教えも素直に信じた、という。

旧統一教会問題の淵源は、戦後の自虐史観にあるのではないか。戦後の呪縛を解かなければ、問題は解決しない、と私は思う。

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