Apple Watch Ultra登場の意味とは スマートウォッチの未来を考える

水深100メートルの耐水性能やマイナス20度~55度の環境でも使える新登場の「Apple Watch Ultra」。価格は12万4800円(出典:アップル、Apple Watch Ultra)
水深100メートルの耐水性能やマイナス20度~55度の環境でも使える新登場の「Apple Watch Ultra」。価格は12万4800円(出典:アップル、Apple Watch Ultra)

9月8日午前2時(日本時間)、アップルが恒例の新製品発表会を行い、iPhone14シリーズなどを発表した。今回の発表で、iPhoneと同様に注目されたのが、Apple Watchだ。

従来モデルの後継となる「Appe Watch Series 8」「同 SE(第2世代)」に加えて、新たに登山家や耐久レース、ダイビングなどに対応する新シリーズ「Apple Watch Ultra」が発表された。

この発表と現在の市場を見ていくと、未来のスマートウォッチのカタチが見えてくる。

格安な中華系スマートウォッチが急増

アップルはApple Watchについて発表会で、「7年連続で世界で最も売れているスマートウォッチになりました」と語っている。実際、市場調査会社カウンターポイント・リサーチ(以下、カウンターポイント)のスマートウォッチのグローバル市場調査によると、2021年秋の時点でアップルの出荷数量シェアは30.1%でトップ。さらに市場全体の売上高の半分を占めているという。

グローバル企業トップ9社のスマートウォッチ出荷シェアを20年(左)と21年(右)で比較(出典:カウンターポイント、Smartwatch Market Grows 24% YoY in 2021, Records Highest Ever Quarterly Shipments in Q4)
グローバル企業トップ9社のスマートウォッチ出荷シェアを20年(左)と21年(右)で比較(出典:カウンターポイント、Smartwatch Market Grows 24% YoY in 2021, Records Highest Ever Quarterly Shipments in Q4)

アップルに次ぐ2位に位置するのは、Androidスマートフォンでトップシェアを誇るサムスン。そして3位のファーウェイへと続いている。

このトップ3社のスマートウォッチは、通知機能やヘルスケア機能、アクティビティの記録などに対応したスタンダードなモデルが中心だ。とはいえ年々機能は強化され、上位モデルは通信機能や決済機能も搭載しており、スマートフォンがなくても、スマートウォッチだけでさまざまなことができるように進化している。

またスマートウォッチ全体の出荷台数も、20年から21年で24%増加するなど、順当に伸びているようだ。

アマゾンで購入できるAMAZFITのスマートウォッチの数々。1万円以下の製品も多い(出典:Amazon.co.jp、価格等は22年9月10日時点のもの)
アマゾンで購入できるAMAZFITのスマートウォッチの数々。1万円以下の製品も多い(出典:Amazon.co.jp、価格等は22年9月10日時点のもの)

しかしスマートウォッチ市場は、低価格ブランドの乱立により、すでに値崩れも始まっている。例えば、先ほどのグラフにある、AMAZFITは1万円以下から購入できる低価格スマートウォッチやスマートバンドを展開するブランドだ。

また、シャオミの「Mi Band」シリーズも1万円以下で購入でき、日本国内でも人気を集めている。先のレポートでも、市場の伸びのうち24%は100ドル以下のスマートウォッチにけん引されているとしている。

アップルもこういった低価格ニーズに対応するため、20年に廉価版である「Apple Watch SE」を追加。さらに今回の発表では、第2世代の「Apple Watch SE」を発表し、9月16日に発売される。しかし価格は3万7800からと価格競争力は強くなく、トップシェアをキープするための製品という位置づけになるだろう。

また、スタンダードモデルの「Appe Watch Series 8」をみても、従来モデルからのアップデートにそれほど大きなインパクトはなく、機能面での進化という意味で停滞感がある点も、低価格モデルが増える理由の一つだといえるだろう。

新登場のAppe Watch Series 8(価格5万4800円より)では、女性の月経周期を正確に検知できる皮膚温度センサーや自動緊急連絡ができる衝突事故検出機能などを搭載(出典:アップル、Appe Watch Series 8)
新登場のAppe Watch Series 8(価格5万4800円より)では、女性の月経周期を正確に検知できる皮膚温度センサーや自動緊急連絡ができる衝突事故検出機能などを搭載(出典:アップル、Appe Watch Series 8)

高級モデルは、よりニッチなアクティビティへ対応

スマートウォッチ市場が低価格モデルに引っ張られている中、新製品を投入するとなると、より高い付加価値のある高級モデルが残る手段といえるだろう。

今回、アップルが新たに追加した「Apple Watch Ultra」には「冒険の時間です。」というキャッチコピーが付いており、雪山登山やスキューバダイビング、トライアスロンといったよりハードなアクティビティに対応。従来シリーズのApple Watchが5万円台から購入できたのに対して、約12万円と倍以上の価格だが、この高付加価値カテゴリーではそれでも安いと好意的に受け取られているようだ。

雪山登山などハードな環境での使用を想定した「Apple Watch Ultra」。2種類の衛星信号を受信することでより高精度に測位可能な高精度の2周波GPSを搭載し、元の位置などの指定地点に正しく戻るルートを表示するバックトレース機能なども備える。
雪山登山などハードな環境での使用を想定した「Apple Watch Ultra」。2種類の衛星信号を受信することでより高精度に測位可能な高精度の2周波GPSを搭載し、元の位置などの指定地点に正しく戻るルートを表示するバックトレース機能なども備える。

実際、高付加価値のスマートウォッチ市場にはもっと高価なモデルが多い。その市場で圧倒的な強さを誇るのがガーミンだ。ランニング向けから本格派のシリアスランナー向け、サイクリングやマリンスポーツ向けなど、さまざまなスポーツに対応したGPSウォッチを取り揃えており、プロのアスリートから絶大な支持を集めている。ラインアップには10万円を超えるモデルが数多くあり、今回アップルは「Apple Watch Ultra」でその市場に参入したというわけだ。

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