イラスト作画AI、作家の敵か味方か 画風学習し新たな絵 盗用を恐れ炎上

作画AI「ミミック」はイラストの画風を学習して新しいキャラクターを生み出す(ラディウス・ファイブ提供)
作画AI「ミミック」はイラストの画風を学習して新しいキャラクターを生み出す(ラディウス・ファイブ提供)

指定した言葉やイラストを学習して新しい絵を作り出す人工知能(AI)技術が国内外で相次いで提供され、話題となっている。国内の著作権法は規制緩和に大きくかじを切っており、AI開発を後押ししている。一方、一部の作家らが反発し、テスト版が公開中止になったサービスも出るなど、新技術の普及には課題を残している。

AI開発を手掛けるラディウス・ファイブ(東京都新宿区)は8月29日、十数点のイラストを読み取り作風を学習して、新しいキャラクターを創り出せる作画AI「mimic(ミミック)」のベータ版を公開した。同社は「想定の10倍以上の利用があった」としており、数万人規模で利用されたとみられるほどの反響を呼んだ。

一方で、一部の作家が、悪意のある第三者が勝手に画像を使用することを止められないとして反発。AI開発に協力した作家が誹(ひ)謗(ぼう)中傷を受ける事態にまで発展した。同社は翌日、「作家のためのサービスが意図せずして迷惑をかけることになった」とサービスを一時停止した。

ミミックは作家が提供する15枚以上のイラストを学習。その作風にあった新しいキャラクターの顔部分を生成する。同社によると、女性キャラクターを得意とする作家が苦手な男性キャラクターを生み出す手助けをするといった利用方法を想定しているという。

ミミックでは他人のイラストを使用することを禁止しており、画像を読み込む際にも警告を表示していた。目視で利用状況を確認し、生成された画像に透かしを入れるなどの対策も取っていた。

日本の著作権法は、平成31年1月に施行された法改正でAI学習での使用には著作権が制限されることが明確化され、海外に比べても一歩踏み込んだ内容となった。作家が自作品の利用を禁止することはできず、作風をまねるだけでは著作権の侵害には当たらない。

ただ、著作権者の利益に不当な侵害があった場合には著作権の制限規定は適用されない。不当な侵害の具体例については実際の判例を待たなければならないが、西村あさひ法律事務所の福岡真之介弁護士は「本質的に中立的なソフトウエアでも悪用される可能性があることを考えないといけない」と指摘する。

イラスト業界では、人気作家の盗用疑惑で作品の販売が中止になるなど、模倣や敷き写しによる著作権侵害が日常茶飯事。作家らは神経をとがらせているのが現状だ。

東京大次世代知能科学研究センターの松原仁教授は「法律的には許されていても、人間の心情にマッチしていない。半面、権利を保護しすぎると技術を阻害する。今回の件が議論のきっかけになれば」と話す。

AIが作成した映画「ジュラシック・パーク」のポスター(ウェブサイト「ROBOMOJO」の画面をキャプチャー)
AIが作成した映画「ジュラシック・パーク」のポスター(ウェブサイト「ROBOMOJO」の画面をキャプチャー)

「帽子をかぶった恐竜が駐車場でオープンカーに乗っている」-。

AIは、スティーブン・スピルバーグ監督の恐竜映画「ジュラシック・パーク」について、タイトルや内容の大まかな説明などを基にこんなポスターを描いた。海外のウェブサイト「ROBOMOJO」に掲載されたもので、同監督の名作「E.T.」もAIにかかれば、「頭部が人さし指を突き出した手になっている奇妙な生物が、満月を背景に自転車に乗っている」絵になった。

作画AIは「数カ月前にはできなかったことができるようになる」といわれるほど日進月歩で進化している。グーグルをはじめとする米国企業や中国勢も注力する分野だ。

将棋ではAIソフトに対し、当初は否定的な意見も多かった。だが、プロの間で活用が進んだことで、将棋の藤井聡太五冠らが定石にとらわれない一手を連発するなど、競技の奥深さを増す一助となっている。作画AIも日本が強みとするマンガやアニメの制作現場を支援する技術として、作家と技術者が二人三脚で発展していくことが期待される。(高木克聡)

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