寿命続く限り活動可能「サイボーグ昆虫」理研などが開発

(Getty Images)※画像はイメージです
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電子機器を装着させた昆虫を人間では入り込めないスペースに送り込んで災害救助などに役立てる、SF映画のような技術の実現が近づいている。理化学研究所などの研究者たちが参加した国際研究グループは、超薄型有機太陽電池を体長約6センチメートルのゴキブリに“搭載”した「サイボーグ昆虫」を開発した。「昆虫の寿命が続く限り、電池切れを心配することなく」活用できることから、さまざまな用途が見込まれるようだ。

理研、早稲田大学大学院、シンガポール南洋理工大学などの研究者が発表した論文によると、サイボーグ昆虫は都市型捜索救助や環境モニタリング、危険地域の検査などの用途などを想定した技術だ。ただしサイボーグ昆虫の移動を無線で長時間制御して環境データを取得するには10ミリワット以上の電力を生成できる太陽電池などの環境発電装置が必要。効率よく発電するために太陽電池のサイズを大きくすると、昆虫の動きに支障が出るという課題があり、実現は難しいとされてきた。

研究グループは体長約6センチメートルで、羽がないマダガスカルゴキブリの胸部に無線で移動を制御する機器とバッテリーを載せ、腹部に厚さ4マイクロメートル(1マイクロメートルは1000分の1ミリメートル)でフィルム状の超薄型有機太陽電池モジュールを取り付けた。今回の研究ではマダガスカルゴキブリの腹部の構造に注目して、体の表面と接着剤で貼り付けるフィルムと貼り付けないフィルムを交互に配置する「飛び石構造」にしたことが特徴だ。体を曲げたときにフィルムが波打つように変形して動きを妨げないことを狙った。

飛び石構造のフィルムが運動の自由度に与える影響を調べるために、障害物を乗り越える試験と、逆さまの状態から起き上がる試験をしたところ「フィルムあり」と「フィルムなし」の成績はほとんど変わらなかった。特に起き上がる成功率を調べた試験では「フィルムあり」で成功率99%という高い数値を示した。

一方、フィルムの厚さを20マイクロメートルにした場合は成功率が16%に低下した。また、さらに薄い2マイクロメートルのフィルムを、飛び石構造を採用せずに接着した場合には成功率が10%だったことから、研究チームは「十分に薄いフィルムと飛び石構造の組み合わせが昆虫の運動性を保持することを示しています」としている。

また、超薄型有機太陽電池モジュールの出力は最大17.2ミリワットを実現できることが分かり、サイボーグ昆虫の運用に必要な10ミリワットを上回った。さらに尾の部分に接続した電極に無線で刺激を送り、右方向へ移動させられるかを試したところ「無線制御が繰り返し成功した」としている。

研究グループは、飛び石構造を活用して「サイボーグ昆虫」を実現する仕組みはマダガスカルゴキブリ以外の昆虫種でも運用できるとしている。今後はセンサーやカメラなどの他の機器と組み合わせることで用途が拡大することが想定されるという。


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