大相撲秋場所2日目は12日、両国国技館で行われ、平幕翔猿が横綱照ノ富士を寄り切り、初金星を獲得した。
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5度目の挑戦で初めて照ノ富士を破り、金星を奪った。取組の激しさを物語るように、花道を引き揚げてきても、翔猿の両肩は上下したまま。乱れた呼吸の間で「うれしいっす」と早口の言葉が弾んだ。
まさに狙い通りの相撲だった。「いつも捕まっちゃってるんで。捕まらないように」。横綱の胸に強く当たっては離れてを繰り返しながら、チャンスをうかがった。
一度押し込まれた直後、左から押し返して照ノ富士をわずかにのけぞらせた瞬間だ。思い切りよく懐に飛び込んでもろ差しとなり、一気に走って勝負を決めた。
殊勲の星について、本人は「まだ実感していない」というが、ぶつかり稽古を多くこなすなど地道に汗を流してきた成果といえる。「押す力が付いてきた」との自信が、この日の波乱を巻き起こす原動力になった。
秋場所は、新入幕だった2年前に11勝で敢闘賞を獲得しており、験は悪くない。今場所の番付は自己最高位の東前頭筆頭。三役目前の地位に「いつもより気合が入っている」という。30歳のくせ者が、さらに場所をかき回していく可能性は十分だ。(宝田将志)
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