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森深く立ち上る純国産エネの「狼煙」 大分「八丁原発電所」

森の中で冷却塔から蒸気を吐き出す八丁原発電所。風向きによっては、かすかに温泉の匂いを感じた =大分県九重町(桐原正道撮影)
森の中で冷却塔から蒸気を吐き出す八丁原発電所。風向きによっては、かすかに温泉の匂いを感じた =大分県九重町(桐原正道撮影)

朝霧があたりに漂う中、山頂の岩場によじ登ると、深い森にもうもうと立ち上る水蒸気が見えた。

九州電力の地熱発電所「八丁原(はっちょうばる)発電所」(大分県九重町)だ。冷却塔からやむことなく吐き出される大量の白い蒸気は、建物や木々を覆い隠し、風に流れては、また上る。

八丁原発電所は、昭和52年に運転を開始した国内最大の地熱発電所。一般家庭約3万7千世帯分に当たる11万キロワットを発電している。

人のいない八丁原発電所の中央制御室。約2キロ離れた大岳発電所から24時間態勢で遠隔制御しているという =大分県九重町(桐原正道撮影)
人のいない八丁原発電所の中央制御室。約2キロ離れた大岳発電所から24時間態勢で遠隔制御しているという =大分県九重町(桐原正道撮影)

地熱発電は、地中数キロメートルの「地熱貯留層」から「蒸気井(じょうきせい)」と呼ばれる井戸を通じて高温の蒸気と熱水を取り出し、タービンを回すことで電気をつくっている。

枯渇することがほぼ無い再生可能エネルギーで、二酸化炭素(CO2)の排出が極めて少ないクリーンなエネルギーでもある。天候に左右される風力発電や太陽光発電と異なり、年間を通して一定の出力で発電できるのも強みだ。

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日本の火山や地熱地帯は九州や東北に多く、地熱発電の潜在能力も高い。資源エネルギー庁によると、資源量は米国、インドネシアに次いで世界3位の2347万キロワット。しかし、現在の発電量は全国の地熱発電所を全て稼働しても約60万キロワットに過ぎず、地熱を有効活用できているとは言い難い。

課題は開発にかかるコストと期間だ。蒸気井を掘るために数億円がかかるほか、山間部に適地があることが多く重機を運び込むための道路などインフラを整える必要がある。国立公園や温泉地との調整も欠かせず、自然環境へ与える影響の評価にも時間がかかるという。

一方、ロシアによるウクライナ侵攻で世界的に天然資源の価格が高騰するなか、純国産エネルギーの価値は見直されており、地熱発電の拡大にも期待がかかる。九州電力は、地域の特性を生かして九州内の6カ所の地熱発電所で約21万キロワットを発電しているほか、福島県や鹿児島県など全国7カ所で地熱発電の調査・開発を進めている。同社では水力や風力などと合わせて、2050年までに再生可能エネルギーを主力電源とすることが目標だという。

深い森の底に眠る豊富な資源。にわかに〝熱い〟注目を集めている。

(写真報道局 桐原正道)

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