「おばあちゃんの原宿」脱却へ 巣鴨の大学生が立ち上がった

開催中の謎解きイベントを楽しむ参加者たち=9月3日、東京都豊島区(大正大学提供)
開催中の謎解きイベントを楽しむ参加者たち=9月3日、東京都豊島区(大正大学提供)

「とげぬき地蔵尊」などで知られ、「おばあちゃんの原宿」と呼ばれるる東京・巣鴨。〝高齢者の街〟のイメージが残る巣鴨から脱却しようと、地元の大学生らが立ち上がった。巣鴨の街を盛り上げようと、街の魅力を再発見できる謎解きイベントを企画。「若者の街・巣鴨」へと変貌を遂げることができるか。

イベントで売り上げ増の店も

巣鴨は、明治24年に上野から移転してきた「とげぬき地蔵尊」への参拝客でにぎわってきた歴史を持つ。巣鴨地蔵通り商店街振興組合の松宮秀明理事長(69)は「参拝客は高齢者が多く、昭和の終わりごろから『おばあちゃんの原宿』と呼ばれるようになった」と振り返る。

今でも、他の商店街と比較すると客層の高齢者比率が高いといい、「長引くコロナ禍で人通りも売り上げも落ち込んだ」と松宮さん。「年配の方でも趣味嗜好が若いという人が増えている。歴史を大切にしながらも進化していかなければ飽きられてしまう」と話した。

そんな巣鴨で謎解きイベント「2026スガモ爆発~AIスクールバスを食い止めろ~」が始まった。巣鴨駅前商店街や巣鴨地蔵通り商店街を散策しながら謎解きを楽しむことができるこのイベントは、地元にキャンパスを設置する大正大学(東京都豊島区)が主催。昨年も同様のイベントを実施しており、2年連続での開催となる。

謎解きイベント「2026スガモ爆発~AIスクールバスを食い止めろ~」の告知ポスター(大正大学提供)
謎解きイベント「2026スガモ爆発~AIスクールバスを食い止めろ~」の告知ポスター(大正大学提供)

昨年は、1カ月の期間中だけで商店街におけるイベント関連の売り上げが約2千万円となり、大きな経済効果を生んだ。イベント参加者へのアンケートによると、参加者の6割以上が30代以下の若年層で、参加者の8割以上がイベントを通して「巣鴨を好きになった」と回答。松宮さんも「普段とは違う年代の人を見かけるようになり、期間中の売り上げが1・5倍になった店もある」とその効果を実感する。

LINEを活用

今年のイベントは「大正大学が創立100周年を迎える2026年、学生たちを乗せたAIスクールバスが突如ハッキングされ、制御不能に陥る。未来の学生から助けを求められた参加者が謎を解き、未来の危機を救う」というストーリーだ。

イベントの進行には、無料通信アプリLINEの自動対話システム「チャットボット」を活用。このチャットボットでは、イベントの進行以外に「甘いものが食べたい」「お土産が買える場所は」など参加者の言葉に反応し、地元のおすすめグルメや土産物店の案内もできる。

こうした仕組みは、運営に携わる同大の学生たちが作り上げた。イベントの運営には1~3年の29人が参加。運営に携わった表現学部1年の小嶋里緒さん(18)は、昨年のイベントを体験したことが入学動機の1つだという。チャットボットで紹介する店舗との交渉などを行った小嶋さんは、「大変なこともあったが、商店街の人との関わりの中で、人の温かさを感じることができた」と笑顔で話した。

イベントは11月末まで。参加は無料で、事前の予約不要。イベントの問題用紙は、巣鴨地蔵通り商店街の「ガモール志学亭」で午前9時半から午後5時まで配布している。(長橋和之)


会員限定記事会員サービス詳細