大阪府泉南市議会の7月定例会で可決された女性市議への決議が波紋を呼んでいる。市議が一般質問で中国出身の国際交流員(CIR)に言及した内容が差別的だとして議会が謝罪と反省を要求したが、市議側は、決議は正当な手続きを経ておらず、発言も市民の懸念を代弁したに過ぎないと主張。決議について掲載した議会の広報誌が配布されれば名誉毀損(きそん)による不利益を被るとし、市を相手に発行差し止めを求める仮処分を近く大阪地裁に申し立てる。
市議は無所属の添田(そえだ)詩織氏(33)。7月7日に行われた市議会定例会の一般質問でCIRに関し、こう発言した。
「市民目線でいえば、半分公務員のような職業に中国籍の方が就くのは大丈夫か、あり得ない、怖いという声をもらっている」
CIRとは、ALT(外国語指導助手)のように、主に学校で母国文化などを児童らに教える外国人だ。市教育委員会によると、一般財団法人「自治体国際化協会」が実施する外国青年招致事業に参加し、1年更新の任用職員としてCIRを受け入れている。4人のCIRのうち、1人が中国出身という。
添田氏は諜報活動への協力を課す中国の国家情報法の存在にも触れ、「中国籍の方は中国政府から依頼されたら(国外であっても)スパイ行為をしなければならない」と強調。このほか、中国を脅威と捉える認識に基づく質疑を行った。
まず問題視したのが市側だ。山本優真市長と冨森ゆみ子教育長は同13日、田畑仁議長に対し、添田氏の発言は「市民の憎悪と差別を扇動する」と抗議。国連の人種差別撤廃条約やヘイトスピーチ解消法を引き合いに、議会に「善処」を求めた。