主張

療養期間の短縮 医療体制充実とセットだ

岸田文雄首相が、新型コロナウイルスの感染者の療養期間を短縮する方針を表明した。

症状がある場合は、現行の原則10日間から7日間、無症状の場合は、検査で陰性になったことを確認すれば7日間から5日間に短縮する。

症状が改善してから24時間経過しているか無症状の場合は、必要最低限の買い物に限定して外出を容認する案も固まった。

コロナがあることを前提に、社会経済活動の正常化に向け、行動制限の緩和につながる取り組みを着実に進めてもらいたい。欠勤者が相次ぎ、交通機関などの社会インフラに影響を及ぼした過去の事態を繰り返してはならない。

そのためには、濃厚接触者の隔離期間も、隔離撤廃を含め見直すべきである。現行では原則5日間で、陰性が確認できれば、最短3日目で解除できるとしている。

ただ、行動制限を緩和することで、感染拡大のリスクは増す。療養解除後もマスクの着用、手指消毒などの感染対策を徹底する必要がある。数日間は高齢者ら重症化リスクの高い人には近づかないといった配慮も必要だろう。

療養期間が短縮されたからといって、症状が残っているのに無理して職場などに復帰するのでは感染を拡大させる恐れがある。こうした場合は引き続き療養を続けるなど、柔軟に対応すべきだ。

一方、行動制限の緩和は、医療のバックアップ体制とセットでなければならない。医療の提供を充実させるためには、医療現場の負担軽減は欠かせない。

首相は感染者の全数把握の見直しを全国一律に26日から導入する考えを示した。政府はすでに、希望する都道府県に対し、医師が届け出る発生届の対象を高齢者ら重症化リスクの高い人に限定することを認めている。

発生届の対象から外れる軽症者のケアも大切だ。相談対応や健康観察を行う「健康フォローアップセンター」の全都道府県への設置が急がれる。病状が急変した際、即座に医療機関につなげる体制を作り上げなければならない。

政府は同センターのデータなども使い、引き続き感染者の総数を把握する。一方で、医療機関を指定し、保健所に詳細を報告させる定点観測の在り方も検討中だ。感染状況を効率的に把握する仕組みの構築が求められる。

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