社長といっしょに 66歳からの油絵チャレンジ

クレパス画との融合 集大成のシュワッチ

完成!「信・ウルトラマン」。なんでバルタン星人がスプーン持ってるの?
完成!「信・ウルトラマン」。なんでバルタン星人がスプーン持ってるの?

胸躍らせた強くて優しい「ウルトラマン」-。思い通りのデッサンはできた。さぁ、仕上げの「色塗り」である。実は筆者にはある〝思い〟があった。それは昨年の『65歳からのクレパス画』から始まったこの企画の集大成として「クレパス画」と「油絵」を融合させる-という計画だ。「そら、おもろい。やってみ」と田伏勉先生(73)も大賛成。他にも先生直伝の〝秘策〟が満載。大満足の作品ができあがった。

勇気の「赤」

ウルトラマンの大きな手のひらに抱かれる怪獣たち。

第1話で登場した「ベムラー」がいる。第8話の「ピグモン」も偽ウルトラマンになった「ザラブ星人」(第18話)も。「ゼットン」(第39話)と戦って敗れたときは、思わず泣いてしまった。なぜか「バルタン星人」(第2話)が科学特捜隊の制服を着て、曲がったスプーンを持っているではないか-。

思い通りのデッサンだ。さぁ次は「下塗り」。ここで田伏先生の言葉を思い出した。

「無難にいくなら黄土色。幻想的にしたかったらブルー。勇気があったら赤でもええで」

なぜ、「赤」は勇気がいるのだろう。

勇気を持って「赤」で下塗り(安元雄太撮影)
勇気を持って「赤」で下塗り(安元雄太撮影)

「赤を使うのは怖い。後で何色でも乗せられる弱い黄土色と違って、赤は強くて残る。完成図が頭にないと使いにくいんや。けど、強い分、絵に深みと熱さが出る。やってみるか?」

もちろん。というわけで「下塗り」は真っ赤になった。

技法を融合

ここで1週間の待ち時間。「本塗り」をどうするか。筆者には計画があった。昨年の『65歳からのクレパス画』で習得したクレパスの技法と今回の「油絵」を融合して作品を描くことだ。

 怪獣はクレパスを使って描き込み(南雲都撮影)
怪獣はクレパスを使って描き込み(南雲都撮影)

「ええ考えや。クレパス画の上に油絵具はしっかりと乗るし、怪獣の細かな描写はクレパスの方がむいとる」と先生のお墨付きがでた。さっそく、前回の企画で使ったクレパスで怪獣たちを描いた。いろんな色を塗っては削り、また塗り込む。すると下塗りの「赤」が生きてくる。

「クレパスの使い方が格段に上達しとるで。やっぱり100号(「さよならアポロン」)を1枚描いたのが大きい。10号10枚描くより100号1枚やな」

田伏先生、最高の褒め言葉である。

顔は黄色に

怪獣たちの次は油絵でウルトラマンの顔。実は何色を塗るか悩んだ。

昨年のクレパス画で『マグマ大使』を描いたとき、登場させたウルトラマンの顔には、銀色の千代紙をちぎって貼って成功した。だが、今回は油絵。なかなか「銀色」感がでない。どうしてもくすんだ灰色になってしまうのだ。

そんなときまた、田伏先生の言葉を思い出した。「赤」の話の次に「珍しいのは黄色や」と話していたのだ。

「詳しい理由はわからんが、日本人はなぜか黄色が好きやない。絵の具も黄色が一番売れんらしい。黄色と白はお葬式のイメージが強いしな。好きなのは紫とか緑と赤が混ざった色-といわれとる。逆にヨーロッパでは黄色が好まれる。秋の紅葉と畑の色。色の好みはその国の自然が大きく影響してるんや」

珍しさを買ってウルトラマンの顔は「黄色」に決定。目は「赤」。バックは黄色と赤を際立たせる「黒」にした。

サイン場所

バックの「黒」。先生が珍しい物を取り出した。白い乳鉢に入った白い粉。「胡粉(ごふん)」という。牡蠣(かき)やホタテの貝殻をすりつぶした日本画の白色絵の具。主に下地作りに使われ、ザラザラとした質感となる。

「油絵で使うのは珍しいが、黒の絵の具と混ぜると、マットな黒。つぶつぶが乱反射してしっとりとした黒になるんや。マチエール(地肌)作りや」

「マチエール」という言葉の響きが気に入ってさっそく導入。混ぜ合わせると団子状態に。これをペインティングナイフや硬い筆で壁塗りのようにキャンバスに置いていく。けっこう力がいる。

怪獣との境目に「下塗り」の赤がチラチラと残り、黒と赤、黄色と黒、黄色と赤の絶妙のコントラストができあがった。

最後はクレパス画の怪獣に原色の油絵具を乗せ、「白」でハイライトを入れて『信・ウルトラマン』の完成である。

さぁサインを入れよう。おや、右にも左にも入れるスペースがない。すると先生が最後のアドバイス。

「サインはどこに描いてもええんやで。この絵をどれだけ楽しんで描いたか-それを表すところに描いたらええ」

「ここでもええんですか?」

「最高の場所や」

習う楽しさ

絵を描く楽しさ以上に、田伏先生から絵を習う楽しさの方が勝っていた。

田伏勉、昭和24年1月生まれの73歳。大阪府寝屋川市生まれ。独身。口は悪いが心の優しいええ男。

ある日、四條畷市のアトリエに行くと、先生が恥ずかしそうに帽子をかぶっている。聞けば3日前に台所で転び、額を5針も縫ったという。

「スリッパが滑ったんや。頭はよう血が出るで。タオル2枚分や」

「無理せんと休みにしたらよかったのに」

「そうはいかん」

先生は律義なのである。1日5時間のレッスン。午後3時になると「休憩やでぇ~」といってメロンや冷えたブドウを出してくれる。こんな先生がどこにいるだろう。

田伏先生、ホンマにありがとうございました。(田所龍一)=おわり


田伏勉先生の教室

現在、田伏勉先生は「サクラアートサロン大阪」(大阪市北区中崎西2丁目、梅田センタービル北館1階)で「クレパス画」のレッスンを行っている。

定期授業は月曜日、木曜日。短期では「クレパス技法12章」や5回の「トライアルレッスン」も開いている。筆者もこの「トライアル」から始めた。

先生の教室はいつも和気あいあい。先生を慕う同世代の素敵な〝レディーたち〟が個性的な作品を描いている。もちろん男性も。最近はなんと北海道から月2回、初老の男性が参加されているとか。「月謝より交通費の方が高いのに…」と先生は申し訳なさそうだ。

他にも水彩画、日本画、パステル画など多彩な先生たちが教えている。

問い合わせはサクラアートサロン大阪(06・6292・7080)。

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