原料高で回転すし転機 くら寿司、創業以来初の値上げ

くら寿司が値上げする商品の一部
くら寿司が値上げする商品の一部

回転すし大手のくら寿司は7日、創業以来初となる値上げを10月1日に実施すると発表した。にぎりずしなど一部メニューの基本価格を10月1日から5~55円引き上げる。原料高が業績を直撃したためで、同社は、本業でもうけられているかを示す令和4年10月期の連結営業損益予想を、28億円の黒字から一転して9億円の赤字(前期は26億円の赤字)に下方修正した。ほかの回転すし大手も原料高などの影響を理由に相次いで値上げする。安さを売りに新型コロナウイルス禍でも好業績を上げ「勝ち組」だった回転すし大手は、転機を迎えている。

「コストの高騰は急速で終わりが見えず、企業努力だけの対応には限界がある」

東京都内で7日会見したくら寿司の田中邦彦社長はこう述べた。現在、約60種類ある1皿110円のすしのうち、仕入れ値が高騰する6種類を除くメニューを115円に、一方で220円のすしは165円に値下げし、110円だった6種類を165円メニューに加える。

同社の4年10月期連結業績予想は売上高が前期比24%増の1824億円で、当初予想から63億円、下方修正した。最終利益は54%減の8億円と大幅減を見込む。

田中社長は「7月までは順調だったが、新型コロナ感染第7波で客足に急ブレーキがかかった。原料高の影響が大きく、持続可能な成長のためには大きな改革が必要」と値上げに踏み切った理由を説明した。

一律の値上げとしなかったことについて、岩井コスモ証券投資調査部の清水範一シニアアナリストは「客足への影響を最小限に抑えつつ、手に取りやすい価格もあわせて提案することで客単価の向上を狙っているのではないか」と指摘。

一方で「あらゆるものが値上がりする中で、まだ回転ずし業態には価格を抑えている感があるが、ここから段階的に値上げを継続すれば、客足に大きな影響が出る可能性がある」と話す。

輸入食材に頼る回転ずし業界にあって、原料高や円安に悩まされるのは他社も同じだ。

「かっぱ寿司」を運営するカッパ・クリエイトも、4年4~6月期の連結営業損益が3億円の赤字(前年同期は10億円の赤字)。最終赤字は前年同期の1億円から4億円に悪化した。

最大手の「スシロー」をフード&ライフカンパニーズは5月、にぎりずしなどのメニューを10月1日から10~30円値上げすると発表。足元の業績を示す3年10月~4年6月期連結決算(国際会計基準)は、営業利益が32・2%減の123億円、最終利益は52億円と半減している。

これに加え、同社では既存店ベースで比較した前年同月比の売り上げや客数が前年を下回る月が続いており、おとり広告など一連の不祥事も追い打ちをかけている。(田村慶子)

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