日韓防衛協力「正常化」へ一歩 韓国では反発も 次官級協議

協議後、取材に応じる韓国の申範澈国防次官=7日、ソウル(共同)
協議後、取材に応じる韓国の申範澈国防次官=7日、ソウル(共同)

韓国・文在寅(ムン・ジェイン)前政権下では一度も行われなかった日韓防衛次官級協議が、6年ぶりに実現した。防衛協力の「正常化」に向け一歩踏み出した形だが、韓国国内では尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権が「対日接近に前のめりになっている」と反発し、より慎重な対応を求める声も上がる。

「国防協力の『正常化』に向け互いに努力することで合意した」。韓国国防省の申範澈(シン・ボムチョル)次官は会談後、記者団に対し関係の「正常化」を繰り返し強調した。

歴史問題をめぐり日韓関係が悪化する中でも強固な信頼関係を維持していた防衛当局間の関係が「異常」な状態に陥ったのは、2018年12月。韓国海軍駆逐艦が、射撃用の火器管制レーダーを海上自衛隊の哨戒機に照射したことが判明した。日本側の非難に対し、韓国側は意図的な照射はなく、むしろ哨戒機が低空飛行で異常接近したと反発、主張は平行線をたどった。

韓国側は翌19年2月、自衛隊機のみを対象にした火器管制レーダーの照射指針を作成。韓国領空や防空識別圏にも侵入する中国やロシア以上に、友邦国の日本に強硬な対応を取るという前代未聞の事態が生じた。

一連の応酬から時間が経過した後も、文政権は関係修復に消極的だった。韓国SBS放送によると、昨年7月に日米韓の海軍高官らが出席し日本で開かれた会議で、米側が「日本のみを対象にした指針は国際法上問題になりうる」と指摘。出席者らは指針改正に合意したが、報告を受けた韓国国防省の上層部が「余計なことをした」と叱責し、合意をほごにしたという。

これに対し、尹政権は日米韓の軍事協力強化の必要性を強調、関係修復に前向きな立場を示してきた。国防省関係者は「日韓当局の関係正常化を明確に示すことは、北朝鮮を牽制(けんせい)し、中露の挑発行為を防ぐことにもつながる」と意義を強調する。

ただ、日韓協力の象徴でもある軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の運用正常化に対しては、日本による韓国向け輸出管理の厳格化措置の撤回が先行すべきだとの主張が、尹政権支持層でも根強い。今年11月に日本で開催される観艦式への参加についても、韓国野党議員らは自衛隊旗である旭日旗への世論の反発を挙げ、軍艦派遣に反対する姿勢を示している。

申氏は記者団に「観艦式への参加を希望する、との『一般論的な』言及が日本側からあり、検討していると伝えた」などと説明。世論を意識した慎重な言い回しは、関係修復になお時間を要する状況をうかがわせた。(ソウル 時吉達也)

会員限定記事会員サービス詳細